ある夏のお話

□なーな
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アジトのテーブルの上で
ブブッ、ブブッ、っとバイブ音が鳴り響く。


「ご主人ー!!!!!!どうして、いつもいつも私を忘れるんですかーっ!!!!!!


私だって遊びに行きたいですーっ!!!!!!


こうなったら、妹さんの携帯に侵入しないとっ!!」


置いていかれた苛立ちを
モモにぶつけるために移動を始めようとしていたとたん


――ガチャ、

玄関の鍵が開けられる音が
静かな部屋に響く

そのまま中に入ってきた人物の足音が
こちらに向かってくる。


「おっ!!ご主人お帰りなさいっ
遅かったじゃないですかー!!!!!!」


「え?…あ、あの…」

シンタローが帰ってきたと思っていたエネだが
現れたのは、コノハだった。


「はぁ?なんでニセモノさんがいるんですか?」


「えっと…あの……その…」


「あーっ!!もっとハッキリ喋れないんですか!?」


「ごめん…。」


「もういいです。
なんでここにいるんですか?」


「あの、シンタローと道で会って
その君を置いてきてしまった。って言われて…それで、えっと…」


「あ、それで私を迎えに来たんですか?
まったくご主人って空気の読めない人ですよっ!!
よりによってニセモノさんとか!!」


「あの…」


「もうこの際なんでもいいですよ
早く私を連れていってください!!」


「いや…あの…僕、シンタローがどこ行くのかわかんない。」


「は?迎えに来たんですよね!?」


「ぼ、僕は…君が暇になってるだろうから話し相手にでもっ!ってシンタローに言われて…」


「それで、わざわざここまで?
ニセモノさんって見た目からでも暇人なんですねぇ〜?」


「君が1人って聞いたから…」


「っ!!……は?なに言ってんですか?
私が1人だと何かあるんですか?」


「君が寂しい思いをしてるのかな?って…」


「っ!!…さ、寂しくなんてないですよっ!馬鹿じゃないんですか?

むしろ、ニセモノさんなんて来たってなにもなりませんから!!!!!!」


「………………」


少し言い過ぎただろうか?
いや、でも…

そもそもご主人が悪いんですよっ!!
なんで携帯置いていくんですかねっ!!


ってか、あの無表情からなにも読み取れない!!
何、考えてるんですかっ?!


考えれば考えるほどなにも解んなくなっていって…むしゃくしゃしているところに、
コノハが沈黙を破る。


「じゃあ、シンタローのこと探すよ

それなら君は笑ってくれる?」


「そ、そうですねっ
ご主人がいれば私は幸せですよっ」


「そっか…よかった…!!」

無表情のまま変わりはなかったけど
ほんのり表情が柔らかくなったような気がした。
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