過去夢小説

□草原のひだまりで
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この時期はうっとうしいぐらいにじめじめする。だけど今日は、驚くほどに晴天だ。

空は真っ青、雲はところどころにぷかぷか浮いている。
風が吹けばさわさわと音をたてて草を揺らす。
花びらが散った木々たちも、鮮やかな緑に色を染めた。


「んー…、…名無子も眠くなってきた?」


さっきまで隣で寝転がって静かに眠っていた彼が目をあけ、私に問いかける。


「…ええ、少し。今日はポカポカしてるから」

「久々に晴れたもんなぁー」

「そろそろ梅雨明けかしら。もう夏がくるのね」

「夏は夏で暑いからヤダー」


なんてことない会話でも、この人の一言一言を噛み締めたい。

私の大好きな人、坂田銀時。





1年前に万事屋の隣に引っ越してきて、家族も友人も知り合いもいない孤独な私に銀さんはよくしてくれた。


『え?隣に越してきたの?ふーん。ところでさ、なんか食いもん持ってない?』


くるくるした銀髪、少しぼーっとした目、たくましい腕。なんだか不思議な人に出会ったな、と私は思った。

家にシチューの作り置きが大量にあることを伝え、私は彼を自宅に案内した。


『うめェェェェ!』


ガツガツと作り置きまで全部食べてしまった彼を見て、今までどれだけ食べてなかったのだろうと少し可哀想になった。


『いやあ生き返った生き返った。俺さぁ、万事屋銀ちゃんっていって何でも屋やってんだけど、最近金が全っっっ然入んなくてさ〜。食いもんも買えなくて』


ありがとな助かったよ、とふわふわの頭をポリポリかきながら言った。



その日から、たまに私の家に遊びに来てくれるようになった。

幸いお金にはそんなに困っていなかったので、なんとか満足させようと少しでも彼の好きそうな食事を用意した。


あるとき甘味が好きだとわかり、大きめのケーキを作ったときは本当に嬉しそうに食べてくれた。


『この生クリームのホイップ加減が云々…。苺のスライスの厚さが云々…。スポンジのこの柔らかさが云々…』


いつもとはうって変わって目をキラキラさせながら少年のように一生懸命熱弁していたが、それが可愛くて可愛くて話は半分ぐらいしか聞いていなかった。


またあるときお団子の女の子神楽ちゃんと、眼鏡の男の子新八くんも遊びにきてくれた。
二人とも万事屋の従業員らしい。
とてもユニークで面白くて、すごく良い子。


『ねえねえ、名無子は銀ちゃんのこと好きアルか?』


晩御飯を一緒に食べているときに、神楽ちゃんは唐突に聞いてきた。


『え!?ど、どうしたの急に』

『ちょっ、神楽!メッ!』

『だって銀ちゃんがいっつも名無子のことす…』

『だァァァァッ!あ、あのっ、名無子さんてほんとにお料理お上手ですよね、いつか僕にも教えてほしいな〜〜』

『そ、そんな教えられるほどじゃないわ』

『いや、わりと本気で。神楽ちゃんがご飯当番のときなんていつもふりかけごはんで…』

『それを言うなら銀ちゃんもいっつも卵かけごはんアル!』

『お前毎日卵かけごはんで良いっつったろーがッ!』


明るくて、賑やかで。こっちに越してきてから一度も寂しいと思わなかったのは本当に彼らのおかげだ。



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