story
□50m
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しばらくして御子柴の指示のもと練習が始まる。
「うちの1年と一緒に練習してもらおうと思う。
それじゃあ一本ずつのタイムトライアルから始めようか。」
今日はおとなしく見学しておくことに決めた名前が凛のいるギャラリーのほうに上る。
凛の隣に並んでみるも、凜はそれに気づかず遙をじっと見つめていた。
いい加減しびれを切らした名前が話を切り出した。
「ねえ、さっきのことなんだけど・・。」
「あ、ああ。」
凛からかえって来た言葉が生返事だったことをいいことに名前はそのまま続けた。
「なんで私が水泳部のない岩鳶に入ったのかっていうと、
少し水泳から離れたかったんだよね。ほんとに少し。」
「はぁ?」
凛は納得がいかないとばかりにそのように返してきた。
「理由としてはほんとにそれだけ。
タイムとかそんなのに追われすぎて、
何のために泳いでいるのかわからなくなった。
考える時間がほしかった。」
それを聞いた凛は落ち着いて聞いてきた。
「じゃあ、なんで今水泳部入ってんだよ。」
「少し前に一大決心してスイミングやめてきた。
岩鳶で自由に泳ぐために。」
凛は顔をゆがめた。
そして名前に背を向けて去って行った。