story

□20m
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「もうすぐ名前ちゃんのレースだね。」






緊張した面持ちで渚がいう。





「うん。そうだね。」







それに答える真琴も表情が硬い。





真琴の隣にいる遙はもうすでにプールしか見ていない。







名前のレースのスタートの合図がプールに響いた。

















『けじめ、つけたいから』




そう言った彼女のけじめの日が来た。


名前にとってのけじめとは、スイミングクラブをやめること。

つまり、タイムを求めて泳ぐことをやめるということである。












招集所で名前は目を閉じて集中力を高めていた。






壁に背中を向けて掌を壁にくっつけたまま体重を下にかけていく。




ゆっくりとした動きでストレッチをしてほぐしていく。






いつも通りでいい。



心の中で何度も繰り返す。



名前が呼ばれる。いよいよレースが近い。













ザプン。





と水を鳴らして名前がプールに入る。


軽く水慣らしをしてスタートの体制に入る。












スタートの電子音が鳴り響く。



瞬時に反応して水中に体を沈める。


そしてすぐにキックを始める。


背筋をのばして、一本のラインを意識して。













50mのターンをする。

その時少しだけ頭をあげてタイムが載っている電光掲示板を見る。







・・・いつもより遅い。


まだ、大丈夫。これは200m。


今からでもあげていけばいい。










レースはすでに終盤。もうすぐ150mのターン。



スパートのかけ方次第でどうにでも変わる。









・・・・名前ちゃんはいつかけるか。


ここからは駆け引きが大切になってくる。


スパートをかけてどこまでスピードを維持できるか。






真琴がそう考えているうちに名前はスパートをかけ始める。



キックの打ち方が細かく変わる。ストロークが早くなる。







ゴールするまで真琴は名前の泳ぎから目が離せなかった。
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