story

□10m
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この春、名字 名前は岩鳶高校2年に進級した。



長年続けていた競泳を少し離れることを決め、名前は春休みから泳いでない。


今泳いだらきっと鈍っていて、とてもじゃないけど、いいタイムなんて出そうにもないそ う思っていた。


泳ぎたいけど泳げないそんなジレンマの中に名前はいた。




昼休みになって真っ先に名前は屋上に行く。



フェンスに寄りかかってパンを頬張り、食べ終わったら空を見上げ物思いにふけるのが日課になっていた。


いつものように誰もいないと思っていたが、今日は先約がいた。


懐かしい顔ぶれ。同じ学校だったんだ。



聞き耳を立てるつもりはなかった。

けど聞いてしまった。

彼らも泳いでないんだって。もう一度見たかったけど、仕方ない。




今日もいつも通りに終わっていく、そう思って教室に帰って行った。



その様子を真琴に見られていたとは思いもしなかった。








「(あれって、あの名前ちゃんかな・・・)」


そんなように真琴は思っていた。






次の日


名前は廊下で話していた真琴達を見つけた。



いつものように通りすぎるつもりだったが、聞こえてきた会話に聞き耳を立てた。



「そうだ!いいこと思いついた!水泳部、作ろうよ」


渚が名案だとばかりに声を大にしていう。



声が出ないほど驚いた。同時に体が疼いた気がした。



何もいけないことをしていないのに顔を背けて通りすがろうとした。






「あれ、名前ちゃん?」





無理だった。


名前は固まり、ロボットのように振り向いた。



いつの間にか話は終わっていたようだ。



振り向けば笑顔の真琴と不思議そうな渚と江の姿があった。


すぐさま渚が真琴に尋ねた。



「まこちゃん、知り合い?」


真琴はさも当たり前のように答えた。




「渚も知ってるよ。覚えてない?
 
 
 ずっと前、スイミングクラブの大会で一緒になることが多かった名前ちゃん。」



「えっ!名前ちゃん?
 
 
 うわー久しぶり!覚えてる!?渚だよ」



渚が顔を近づけてきた。

さすがにもう気まずいから話さないってことはできないようだ。





「うん、久しぶりだね。
 

 ちゃんと覚えてるよ。」





真琴は名前の引き攣らせた笑みに違和感を覚えた。
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