不安定な欠片

□代わり映えしない日常に隠れた代わりないもの
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『......あれ?いつの間に寝てたっけな?』

ぼやーっとする視界の中に
一番始めにうつったのは
もふもふとした何かだった

(そういえば、昨日猫を拾ったなぁ)

そんなことを思いながら
そっとその猫に手を伸ばす

「っ!?何者ですか!!」

『......ん!?』

触れたはずの猫から
何やら人語が聞こえて
私は一気に覚醒した

朧気な視界が一気にクリアになり
目の前にいた猫だと思っていた
者をみる

「.............へ?」

面を被ったきつね...
その狐は驚いた様にコテンッと
首を傾げていた

『.....こんちゃん?』

そっとその名を呼ぶと
目の前の狐はピクンッと反応し
恐る恐るという様に

「宵月様で在らせられますか?」

そう尋ねた

審神者である
私の名前は宵月と付けた筈だ

もしや。
という思いを込めて私は尋ねた

『ここの初期刀が山姥切国広で、今まで手当てされてたのが、堀川君とばみちゃんなら君が言った宵月さんで私はあってるんじゃないのかな?』


そう言って笑うと
目の前の狐はウルウルと瞳を潤ませると
ピョンっと私の方に跳んできた

それを抱き締めると
(危うく落としかけたなんて...そんな、そんな)
そっと撫でた

『こんちゃん、こんちゃん』

「はい、宵月様。貴女の本丸のこんのすけでございます」

私が名前を呼ぶと
彼はそれは
嬉しそうに自己紹介?をしてくれた


暫く
こんのすけの毛並みを堪能していると
こちらに向かう足音が聴こえた

足音は私がいる部屋で止まり
障子に彼のそのシルエットが写っていた

彼は部屋に入る際
癖なのか一言声をかけてから
手元の報告書を見ながら報告をしていた
彼は一通り報告を済ませると
漸くこちらに気が付いた

私は抱き締めたい衝動をグッと抑えて
へらりと笑い軽く手を振った

『遠征お疲れさま。まんば君』

そう声をかけると
彼は手に持っていた
報告書を床に落とし
床一面が報告書に埋まった

「......ある..じ.....か?」

まるで信じられない者でも
見たかの様な顔をす山姥切国広に
私は微笑んだ

(あぁ.....もう無理だ)

私は今まで我慢していた
自分の欲を抑えることを止めた

(だってこんなにも....)

私はその場から立ち上がり
山姥切国広に抱き付いた

『今日も今日とて本当に可愛い‼会いたかったよ、まんば君』

そう言って
ぎゅっと抱き締めた


代わり映えしない日常に隠れた代わりないもの




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