不安定な欠片

□これは、運命か。いいえ、平凡な夕暮れです。
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『......イベント走りたいなぁ』

そう口に出しながらも
カタカタと作業をする

才色兼備という言葉を
与えるために産まれてきたような彼女
神無月 舞は悪態をつきながら作業していた

彼女は3年ほど前
刀剣乱舞というPCゲームにハマった
それからというもの愛を捧げていた


『あぁ...早く帰りたい』

「神無月さんって愚痴を溢しながらでも仕事できるから凄いですよね」

隣のデスクで作業をしていた
同僚が話しかけてきたが
私の頭の中は朝に手当てに出した
堀川君とばみちゃんの事でいっぱいだった

(もう手当て終わってるもんなぁ...刀装もちゃんと持たせて.....後内番も考えないとなぁ....カンストできてない子達もカンストさせたいし.....あとは....)

などと考えていると

『あ.....終わった』

本日の仕事全てを片付けていた。
だから、これさえ終わったら
もう帰って良いのだ

そこからの私の行動は早かった。
さっさと書類を上司に提出して
自分のデスクを整えて帰った

書類を上司に提出する際
「神無月君はいつも
そんなに早く帰りたいんだね」
と笑っていたので私も微笑み返した
(はい。早く刀剣乱舞がしたいです)
とは口に出さず

帰り道。
道路の端にふわふわとした何かを見つけた
丁度端に寄っていた事もあり
それを観察する

よく見るとそれは
黄色い毛並みで青い瞳をした猫だった

(ここで狐で、助けたお礼に本丸へ〜なんてあったら面白かったのになぁ)
などと夢物語を頭の端で考えながら
目の前の猫に歩み寄る

『猫、猫。こんなところでぐったりしているのなら、私のところに来るかい?手当てとお食事をあげよう』

どうする?と猫に訪ねるのも
不思議な話だがまぁいいだろう。
猫は一鳴きするとじっと私の目を見た

(本当に...綺麗な目をしてる猫だなぁ...)

そう思いながら猫を抱き
それ以外帰る道中特に何もなく
するなりと帰宅した

そのまま床に下ろすのも
気が引けて、
とりあえずお風呂に入れることにした


猫は大半水を嫌がるものだが
この猫は嫌がることはせず....

(というか、無反応?)

何も反応を見せなかった
それをいいことに猫を丸洗いした

猫のお風呂が終わり
タオルで拭き、
ドライヤーで乾かしていると
黄色の毛並みはLEDライトに反射して
キラキラと輝く毛並みになっていた

『綺麗な毛並み.......』

無意識に呟くほどには
とても綺麗だった

私がそう呟くと猫は
私の元から飛び降り私から顔を背けた

『えっ?なに?ドライヤー熱かった?』

猫の正面に回り込み
そう尋ねると

「.......にゃー」

猫は何処か不服そうにそう鳴いた

その姿が"彼"と被った

『猫、猫。』

猫の目の前で指を動かすと
アイスブルーの瞳だけで指を追う

(ただの猫か......)

"綺麗"という単語に反応する
黄色い...というか金色の毛並み
アイスブルーの瞳を持つ猫

『まんば君要素たっぷりなのにな』

そう言いながら
目の前の猫を撫でる。
猫は嫌がる素振りを見せることなく
大人しく撫でられていた

(あれ?.....おかしいな...)

ただ猫を撫でているだけなのに
私の視界はどんどん歪み始めた
視界が完全に闇に落ちる前に
私が見たのは
電源を入れていないパソコンだった



これは運命か。いいえ、平凡な夕暮れです。




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