不安定な欠片

□あまりにも長く続いた夜のお話
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パソコンが壊れた
私にとっては死活問題だった
刀剣乱舞が私の癒しだったからだ
正直、パソコンに内蔵されていた
仕事のファイルなどは
仕事の同期に言われるまで気が付かなかった

その日の内に
パソコンを買い
刀剣乱舞をやりたがったが
そうは問屋が許さなかった

いきなり遠方への出張が決まった
期間は無いと告げられた
正直訳がわからなかった

それでも仕事だからと
一生懸命に励んだ

その時、よく見るのが
私の本丸の夢だった

おじいちゃんや子狐とお茶を楽しみ
桜の下で皆で宴会
庭で粟田口達と遊ぶ

とても楽しい夢だった

結局3ヶ月という
無駄に長い出張を終えて
直ぐに新しいパソコンを買った

出張先で買っても良かったのだが
何分私はパソコンを持ち歩きたくはない

自宅のパソコンに仕事のデータを
入れていたのもUSBから入れたり
出したりしているので
実際はパソコンを持ち歩いてはいない

パソコンを持ち歩いていて
何かあれば私が死ぬ。

まぁ、何はともあれ
新しいパソコンを買った。
買ったのだが
刀剣乱舞をインストールしても
私のデータベースに
飛ぶことは出来なかった

毎日、毎日。
刀剣乱舞を開くのだが
ログインは出来なかった

意味が分からずに
ずっと月日が進んでいった

気がつけば
パソコンが壊れて
6ヶ月という月日が流れていた

そんなある日

『っ!?』

ログインボタンを押すと
本丸の扉が開いた

ずっと待ちに待った本丸の扉
しかし.....

『土煙やばっ!!げふっ!えっ!?なに!?こんなに埃っぽくなるの?」

私がいなかった月日は
本丸の門すら埃まみれにした様子だった

光が収まったところで
初めて目の前に
人がいたことに気がついた

『あれ?おじいちゃん?蛍ちゃんに、鶴さん、それに太郎と次郎?』

三日月、蛍丸、鶴丸、太郎、次郎
皆が門前の中庭に集まっていた

しかし、何やら
様子がおかしかった

近くにいた鶴丸の側に寄り
その真意を確かめる

『っ!?.......鶴さん』

鶴丸の左腕は青黒く変色しており
とても刀を握れる状態になく
真っ白な姿はなく
土埃で遠目では分からなかったが
黒に近い灰色になっていた

次に、蛍丸、次郎、太郎と見ていき
最後に三日月に目をやる

三日月は瞳を細めて
愛おしい物を見る目で微笑んだ

「お前の帰りをずっと待っていた」

皆が重傷ぎりぎりまで
そこに立っていた

色々な思いが体を過った
私は勢いよく
自分の頬を両手で叩いた

とても良い音がして
物凄く痛かった。

そう。痛かったんだ。みんな

次郎と太郎の手を取り、皆に言った

『週一で宴会するって約束したからさ。だからさ、戦いには行かずに休もうよ。』

私は笑顔で
いつものようにふざけて言うつもりだった
だが
傷ついた皆を見て
笑うことなんでできなかった

皆を連れて
修復部屋に入った

扉が異様に固くて
開けるのにとても苦労した

今、私が連れているのは
大太刀などを短時間で
回復させるには時間がかかる
刀剣ばかりだった

そんな刀剣をも短時間で回復させれるのが
手伝い札だ

手伝い札は
一週間単位で政府から支給される
しかし直ぐに使ってしまうため
中々貯まらないのだが
この本丸の手伝い札は
山ほどあった

例えば。そう。
私がいない間ずっと
"誰も手入れをしていないかのような"

そんな考えを打ち消すように
ブンブンと頭の中の想像を払い

三日月達の手入れを進めた
手伝い札が沢山あるお陰で
早い回復が見込めそうだった

安心して、
畳に座り込むと
近くで手入れされている
蛍丸が私に目を向けていた

『蛍ちゃん?どうしたの?』

蛍丸の頭を撫でながらそう訪ねると

「主、僕たち以外の刀剣も...手入れをしてあげて」

蛍丸が言った言葉が
一瞬理解できなかった

この本丸は
とても賑やかな本丸だった
必ず何かしらの音がしていた

長谷部がいつも廊下を
行ったり来たりする音が聞こえてきたり

あれ?長谷部は?

粟田口の皆が庭で遊んでいて
いち兄が微笑ましく見ていて

粟田口の皆は?いち兄は?

道場で鍛えていたり
調理場で料理作っていたり

その音が何もしないのだ。
嫌な予感がした。

『ねぇ......まんば..くん。....まんばくん...まんばくんは?』

聞くと、太郎が
「加州達の部屋」だと口にした

それを聞いた瞬間
私は廊下を走った

いつも、廊下を走ると
誰頭に起こられていた
その声が聞こえない。
それだけで泣きそうになっていた

目的の部屋に着くと
スパンっと障子を開けた
そこには灰色の布の中にうずくまる
淀んだ金の髮をもった彼がいた

暫く、障子を開けていなかったのだろう
部屋全体がとても埃を株っていた
彼自身にも埃がかかっていた
今は、そんなことはどうだっていい

そっと彼を抱き寄せた
抱き寄せた時にピクリと彼が動いた

『.......まんばくん。ただいま』


そう言った私の顔を
見た彼の瞳はやっぱりとても綺麗だった。



あまりにも長く続いた夜のお話
今、夜が明けた

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