運命に抗う物語

□07
1ページ/1ページ


アシュレイが去って行くと
それに合わせるように
フィンレイが部屋に入ってきた

「あいつは何かあったのか?」

去って行ったアシュレイに
目をやるように
フィンレイが呟いた言葉に
私は返事を返した

『....私の事が好きじゃないんだと思います』

「え?」

『....』

「どうしてそう思ったのか、聞いてもいいかな?」

初めは驚いた顔をした彼だったが
少し微笑むと理由を尋ねてきた

『.......握手したら、顔を真っ赤にして何処かに行ってしまったんです。私、何か失礼なことをして怒らせてしまったんでしょうか...』

私が理由を言う
フィンレイはどう返していいのか
分からないようで反応に困っていた

「い、いや。それはないはずだよ」

『....やっぱり、ベッドに座ったまま挨拶したのが駄目だったのでしょうか?初めは大事だとよく言いますし....』

私はあのとき何か
気に触るような事をしただろうか
普通に接したはずだ....
でも、もしも
私の常識とこの世界の常識が違った場合
私は彼にとんだ無礼を働いたんじゃないのか

色々な事を考えていると
どんどん嫌な方に考えは行き着く

顔色を悪くした私を見て
フィンレイはそっと
ベッドサイドまで近付き
私の頭を優しく撫でてくれた

「リンネが考え込む必要なんて無いよ。ただあいつが戸惑っただけさ。」

『戸惑う?』

フィンレイが発した言葉に疑問が過る
そういえばアシュレイが来たときに
何か物凄いことを言っていたような気がする

『.........。』

「リンネ?」

『フィンレイさん、妹ってどういうことですか?』

私がその言葉を述べると
フィンレイはとても
爽やかな笑顔を浮かべた
そして、私の手を取ると

「君を養子に取ることにした」

と口にした。

『.......はぃ?』

彼は何と言ったのだろうか
何か聞こえてはいけないものを
聞いたような気がする。
きっと気のせいだ

『フィンレイさん、すいません。もう一度言っていただいてもいいですか?』

私がそういうと
彼は優しく子供に言い聞かすように
口を開いた

「私はね。この街に長く住んでいるんだ。でも、君を見たことはない。しかも、君はあの森にいた。武器も持たずに、一人であの森にいたということは身寄りがないと考えて妥当だろう。だから、私が君を引き取ろうと思ったんだ。」

この人は何を言っているのだろうか
辻褄が合っているようで滅茶苦茶だ
合っているのは身を寄せるところがない
つまり、身寄りがないということだけだ

私にとっては
ある意味、願ったり叶ったりの話だが....

『それって、フィンレイさんの独断で決めた事じゃ無いんですか?アシュレイさんにも許可がないと...』

「そういえばそうだったな。」

話を言い終わる前に
フィンレイはさらっと言ってのけ
顔だけ扉の方に向けると

「彼女はおまえの許可がないと、ウチに来てくれないらしい。アシュレイ、おまえはどう考えてる?」

『へ!?』

フィンレイの言葉に驚き
扉の方に目を向けると
おずおずとアシュレイが姿を見せた
そして、静かに部屋に入ると
私がいるベッドまで近付いてきた

「兄さんが妹とか言ったときは、正気かどうか疑ったけど....俺は君なら良いと思える。だから、えっと....歓迎するよ、リンネ」

そう、照れくさそうに笑った彼は
幼さが残るがフィンレイと似ていて
何だかとても微笑ましくなった


「アシュレイはこう言っているが、リンネ。君の返事を聞いてもいいかな?」

そっと目を閉じる

私は.....
気が付いたらTODの世界にいた
リオンやスタンがいる世界に
でも、ここはフィンレイがまだ生きている
つまりは原作前の世界.....
これから先、
私という異物がいることで
どうなっていくのかなんて
全く予想が付かないが
この兄弟の元でなら
何とかやっていけそうな気がする
何よりも、フィンレイを助けたい

閉じていた目を開き
真っ直ぐにフィンレイを見つめた

『これから、よろしくお願いします。フィンレイ兄さん、アシュレイ兄さん』


優しいフィンレイが
生きている世界を望むことを
許して貰えるだろうか





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ