運命に抗う物語

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もしもこれが夢なら
リオンが颯爽と助けに来てくれて
マリアンにしか見せないような優しい笑みを
浮かべて微笑んでくれるだろう

だけど夢ではなく
しっかりとした現実だからこそ
ピンチになっても
誰も助けになど来てくれない

ピンチになったら誰かが助けに来るなど
現実になど有り得はしない
誰かが作り出した世迷い言だ


しかし
世迷い言だと分かっていても
自分ではどうにも出来ないため
誰かにすがりたいという気持ちは理解できる
今の私がまさにそうだ

ウルフが目の前で
血眼になりながら私を見ている
正直恐怖が凄まじく
立っているのがやっとの状態だった。

再びウルフが飛びかかろうとした時
それと同時に私の膝が崩れて
ペタンッと地面に座り込んだ

その瞬間、私は悟った
(あっ....死ぬんだ)
別世界に来て5分程度で死ぬ人生
我ながら爆笑ものだ

そう思いながら
私はそっと目を閉じた


(僕はお前のように能天気で図々しくて馴れ馴れしい奴が大嫌いだ。だから.....後は任せた)

(別に欲しいわけじゃない‼あれば食べる。それだけのことだ‼)

(何を言っているんだい!?マリアン。僕は別に...)

(僕は例え、何度生まれ変わっても必ず同じ道を選ぶ)

目を閉じた私の視界に広がるのは
暗闇ではなくて
ただ"見てきた"君の姿。

『そうだ....生きなきゃ』

閉じていた目を開けた
随分と時間が経っているはずなのに
ウルフはまだ宙を舞っていた
私がウルフを視界に確りと捉えて
手に持っていた木の棒を握り締めた

すると先程まで
止まっていた時間が動き出したかのように
ウルフが襲い掛かってきた
私は力を木の棒に集中させて
ウルフを凪ぎ払おうとした
すると蒼白い光が木の棒から飛び出し
ウルフを巻き込みながら
近くに合った大木に衝突した

『えっ?』

私は思わず自分が持っている
木の棒を見つめた
木の棒は役目を果たしたかのように
ボロボロになって
もう使い物にはなりそうになかった。
私は木の棒をそっと自分の足元に置き
先程のウルフに近付いた
ウルフはもう動いてはいなかった

ゲームでは当たり前にやっていた戦闘
経験値が必要だからと沢山やってきた
しかしこれは現実だ
現実で生き物を殺してしまった。

『ごめんなさい。』

私はウルフの死骸を静かに撫でた。
ウルフの近くには
白く光る何かが沢山落ちていた
私はそれを1つ掴んで手のひらにのせた

『レンズ....』

モンスターを倒して出てくるレンズ
これでこの世界はTODかTOD2の世界だということが確定した。

私はレンズを全て拾うと
ウルフにさよならを告げて立ち上がった。

『まずは、町に行こう』

困った時ほど神を人は信じるけど
私は信じない。
だって
さっき助けてくれなかったでしょ?

少女はその思いをそっと胸に仕舞い込み
森を歩き始めた。

ちょうど、その頃

「さっき音がしなかったか?」

ダリルシェイドに向かおうと
森を歩いていた青年は足を止めて
辺りを見渡した。

最近モンスターが彷徨くようになった森
こんなところに人はあまり寄り付かない
しかし、もし誰かがいたとしたら

そこまで思いを巡らせた後
青年は少し顔を青ざめ
音の聴こえた方へと足を向けた




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