運命に抗う物語

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目の前には
ウルフが唸っていて
私の手にはその辺で拾った木の棒

涙を目に浮かべながら
必死に木の棒を振り回す姿は
端から見ればさぞ滑稽だろう

そんなことを頭の隅で考えながら
私は事の顛末を思い返していた。




思えば酷くつまらない日常を過ごしていた
決められたルールの中に縛られて
誰かに言われたことを
言われた通りに行う
意見を言ったところで
自分の世界に陶酔している人々は
誰も耳を貸さない
その癖、思い通りにいかなければ
難癖をつけて人を自分の世界に巻き込む


全て言われるままに生きてきた私は
まるで誰かの操り人形だ



そんな操り人形の私が
まともになったきっかけが
リオンというキャラクターとの出会いだった
彼もまた誰かに色々な物を
押し付けられ不自由な現状にいた
でも彼は私と違って己を持っていた
自分を持っていたからこそ
望みがあったからこそ
彼は私と違って"人"でいられた

私も変わろう.....
いつしかそう思えるようになっていた
長く伸ばしていた髪を切り
俯きがちだった顔を前に向けるようにした
そして、人と話すようにした。

すると私の世界に色が付いた
彼のおかげで世界が大きく変わった。
彼のおかげで笑えるようになった。
彼のおかげで退屈な日々が楽しくなった。


私は彼から大切な物を沢山もらった
今度は私が彼に返したい....
私は沢山もらったから
その分以上を彼に返してあげたい


彼の最後があれで"良かった"なんて
誰にも言わせやしない.....
彼が笑ってくれるのなら
私は

『運命にだって抗ってやる!!』


独り言のように部屋で呟いた私は
ベッドへとダイブした。
制服のブレザーは勉強椅子に掛けたが
それ以外は着たままだった。
皺になるから制服のままベッドで寝ないでね。と母に何度も言われるが
正直、部屋にベッドがあるのがいけないと思う。
まるで「ここでお休みよ」と言っているようなものではないか。

自分が満足するまで
ベッドの上でくつろいだ後
そろそろ私服に着替えようかと
ベッドから降りた

『えっ?』

すると私の部屋だったものが無くなり
辺りが森へと変わっていた

チュンチュンと鳴く
何処かで見たことがある黄色い鳥
そう....何処かで...

『チュンチュン!?』

まるで雀みたいに
さも当然のように森をテコテコと
歩いているがあのような鳥は
私の世界にはいない

『えっ?まさかのトリップ?』

自分で言った言葉に苦笑いしながら
私は辺りを見渡した
すると近くの茂みから
ゴソゴソと音が聞こえた。
もしや、人かもしれないと期待して
その茂みを見ていた
私の期待はすぐに裏切られた

茂みから出てきたのは
黒い体毛に覆われた狼
ウルフだった。
ウルフは私を視界に捉えると
後ろ足で地面を蹴り飛び掛かってきた

それなりに距離が合ったため
横に少しずれることが出来た
私は近くに合った木の棒を
手にしてブンブンと振り回し
ウルフに相対することとなった






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