コチョウランの花に願いを

□私と白ウサギ
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オーナーに頼まれた品を
買い揃えるために
ハートの国の城の領地に来ていた

頼まれた物は少なくても
ハートの国の城の領地が治める
城下町はだだっ広い
(他の領土も同じことは言えるのだが...)

「風船、風船っと」

俗に言うお買い物リストには
買う品とそれが売っている場所も
一緒にメモされていて
とても便利で分かりやすいものだった

ありがとう、オーナー。
と何度も心のなかでお礼を言った

目で買い物を楽しみながら
メモに書かれた地図通りに
道を進んで行くと
目的地である店に着いた

さぁ、いざ行かん!
とばかりに入ろうとしたところで
視界の端に何かが映った

白と赤の....

パーンッ

『っ!?』

あと一歩、あと一歩
踏み出して店に入ろうとしていたら
先程打ってきた"弾"に
当たって死んでいただろう

音のなった方に目をやると
予想通りの人物が立っていた

「まだこの国にいたんですか?さっさと帰ったらどうですか?それよりも早く、僕の前から消えていただけますか?」

ペーター・ホワイト
白ウサギがそこにいた。

『毎回、毎回、私を見る度に銃口を向けるのいい加減止めてくれない?』


毎回なのだ
この白ウサギさんは
私を見る度に銃口を向けて発砲してくる。
こんなことに馴れたくはなかったが
いい加減なれてしまった

溜め息をついた
私が気に入らなかったのだろう。
ペーターの眉間には少しシワがよった


「貴女がこの国にいるのが問題なんです。用事が済んだのならさっさと自分の国に帰ってください。」

その言葉に少し
疑問を持った。

ペーターは自分の国に帰れと言った
普通なら余所者には
元の世界に帰れと言う筈なのに....

思えばペーターと
まともに喋ったのは
今回が初めてかもしれない。
この白ウサギさんとの
初対面は思い出したくもないほどに
悲惨なものでまともに
喋った覚えなど無く
毎回こうしてペーターに
襲われる時には必ず誰かしらいた。
その為、二人で話すことは
初めてということだ。

すなわち、この白ウサギさんは
勘違いをしている。


『えっと......私は誰でしょうか?』

「.........は?」

自分の口から咄嗟に出た言葉に
私は今すぐにでも
この場を離れたくなった。

"私は誰でしょうか"
なんて今時子供でも言わない。
恥ずかしさにうち震えていると

「....ぺてん師のアキ」

『へ?』

ペーターの言葉に
次に呆気に取られたのは私だった

彼もまた
私を"アキさん"だと勘違いしていた

『...私はアキさんではなく、有希って言います。今は遊園地に滞在しています。余所者とこの国の人達には言われています。えっと......よろしくお願いします』

そう言い、お辞儀をすると
白ウサギはまるで
訳のわからないものを
見るような目でこちらを見ていた

『えっと......』

「.........分かりました。」

暫くの間をとった後
ペーターは静かに何かを
理解したように頷いた

「貴女があの女とは違うということは覚えておきましょう。ただし、貴女と馴れ合うつもりは全く持ってありませんので。」

と口にすると彼は
私とは反対方向に向かって
歩きはじめた

その場に取り残された私は

『これで、会うたびに銃口を向けられなくてすむかな?』

そう小さく笑い
オーナーの頼まれものを
済ませるために店に入った




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