コチョウランの花に願いを

□私と三月ウサギ
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『これで大丈夫なの?』

「はい‼バッチリです‼」

「お似合いですよ‼」

遊園地のスタッフ達が着ている
制服?を身に纏い
服の袖を持ち上げながら
戸惑いながら聞く

すると皆がグッと親指を立てて
口角を上げる

似合ってないのは
重々承知しているんだから
言ってくれれば良いのに・・・
と思いながらも
折角用意してくれたものを
突き返す訳にもいかずに
仕方なく衣装を身に纏う

ここのスタッフの人は
美男美女揃い過ぎて辛い
どうか誰も見比べてきませんように
と静かに願った。

そもそもの始まりは
『私でも手伝えるような仕事ってあったりする?』
という私の一言だった。

遊園地を拠点と置いてから
他の領土にも行き役持ち達に出会ったが
皆が口を揃えて
"劇場のぺてん師"だと言うのだ。
どうやらその"ぺてん師"と私は
似ているようだ..........



そして何時間帯か経過した頃に・・・
スタッフが部屋に入ってくるや否や
服を着替えてくれと言って来たのが、
つい先程。
そして現在に至るわけだが...

『オーナーは仕事の内容については何か言っていた?』

「私たちと同じじゃないですか?」

「そうですよ!私たちとお揃いですし‼」

最も重要な仕事の内容を
誰も知らない。
その事実が一番私を困らせた。

「早く行きましょう‼」

早く早くと急かすスタッフ達と共に
遊園地内に向かった。


「お前らのボスはどうしたんだよ?」

「ブラッドは他にやることがあるから来れないんだよ。だから、俺が代わりに来た。」

「三月ウサギか.....まぁ良いだろ。」

オーナーであるゴーランドと
話しているのは
ふわりと揺れるオレンジ色のうさみみ。

うさみみを見すぎていたためか
三月ウサギ...エリオット・マーチと
目が合ってしまった

「あっ.......」

『やぁ......久し振り....』

「アキィィィィィィィ!!」

『グハッ!』

軽く挨拶をすると
もう会うたびにやっていることを
平然とこのウサギさんはやってのけた
会うたびに、ぺてん師のアキさんと
間違えて抱き付いてくる。
最早抱き付くというよりも
絞め殺すレベルである。
だってほら、背骨がバキバキいってる。

「いつハートの国に来たんだよ?何処に住んでるんだ?まだ決まってないなら、帽子屋屋敷に来いよ!ブラッドだってアキなら歓迎するからさ。な?」

『エリオット!!私はアキさんじゃないってば!!』

自分の世界に浸っていて
愛しい者を見る目で
私を通して誰かを見ている
エリオットを押して身を引かせた。

「ユキか.....そうだよな。こんなところにいるわけないよな...。すまねぇ。」

『別にエリオットを責めてる訳じゃないし。良いよもう....』

しょぼんと垂れた耳を見て
誰がこれ以上彼を怒れるだろうか
私には.....無理だ。

「毎度毎度三月ウサギは飽きねぇな。こいつは余所者だって言ってんのによ。」

今まで黙っていたオーナーが
話に入ってきた。
存在を忘れてました。すいません。

じゃあ行くか。
そう言ってオーナーは
エリオットを連れて
建物の中に入っていった


『エリオットって本当にアキさん好きだよね』

軽く笑うとスタッフの皆は苦笑い

「オーナーに仕事の内容伺わなくて良かったんですか?」

『えっ?忘れてた!』

ぽりつと言われた一言に固まってしまった
そもそもゴーランドに聞かなければ
何も分かりやしないのだ

『ちょっと聞いてくる‼』

そう言ってゴーランドが入っていった
建物に駆けて行く。


『オーナー、聞きたいことがあr』

「アキ!?」

『その流れはもういいから!!』

私とエリオットが話しているのを
ゴーランドは暖かい目で
見守ってくれていました。




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