コチョウランの花に願いを

□私と遊園地
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(目が痛い・・・・・・・・)

遊園地に着いてまず始めに思った事だ
見渡す限り様々な色をふんだんに使っている
色彩などという言葉は始めから
存在すらしなかったような
メチャクチャな色合いだ

「あれ?オッサンいないな・・・・」

軽く遊園地を見渡した後から
ボリスが頬を掻きながら呟いた
顔には"参ったな"と確りと
書かれていたため
彼が何を思っているのかは
すぐに分かった

とりあえず
ボリスがオッサンと呼んでいる
遊園地のオーナーが来ない間に
元来た道へと引き返そうとした

ゆっくりゆっくり
顔と体はボリスに向けたまま
足だけを静かに引き下げる
一歩一歩慎重に・・・・・・・・・

(意外にもいけるんじゃない?)

遊園地に住みたくないというわけではなく
ただ何となくここのオーナーには
会わない方がいいと考えた
いっそのことエースのように
テント暮らしでも良いかもしれない

そんなことを思いながら
慎重に足を退いていると

『っ!?』

「おい。アンタ大丈夫か?」

後ろ向きに迫ってきた
私を真っ正面から受け止めた後
とても聞き慣れた声が飛んできた
そう・・・・・・とても聞き慣れた・・・・
例えるなら、ハートの国のアリス
をプレイしていた時遊園地でよく聞いた声

ギッギッギッとまるで壊れた
機械人形のように首を後ろに向けた

『「・・・・・・・・・・・・・・・・」』

そこには何やらよくわからない装飾品を
服に沢山付けていて更に
ただ一つに括れば良いものを何故か
三つ編みにしている男性がいた

(ヤバい・・・・全部悪口じゃん・・・・・)

自分が今まで考えていたことが全て
彼に対する悪口であると認識したときには
既に遅かった

「何だよその"服に付けている装飾品は"っていう顔は‼」

どうやら彼は服のことは察したらしいが
自分の髪型も不信に思われているとは
察しられなかったようだ

「ところでよ・・・・・」

『?』

話を変えるように話し掛けてきた
彼に目を向けた

「どうしてアンタが此処に居るんだよ?ハートの国には劇場はなかった筈だが?」

(えっ?・・・・・・今何て言った?・・・劇場?)

ハートの国のアリスは大好きな作品だ
続編みたいな感じに今度発売される
というクローバーの国のアリスの内容も
クインロゼの公式で見ていたが
領土で劇場等存在しない

「もしかして、あれか?良い感じの台本が書けなくなったから"素材"探しにでも来たのか?」

私を見る彼の目に嘘を言っている気配は
全くない
ただ本当にどうして来ているのかが
わからないから聞いているだけで
何も知らない私をからかっている訳ではない

『あの、私は』

"劇場何て知らない"
そう言うつもりで遊園地のオーナーに
口を開きかけたところで

「オッサン‼」

「ボリスてめえ!!オッサンって言うほど俺は歳じゃねぇっていつもいってんだろが」

今の今まで遊園地のオーナーを探していた
ボリスがパタパタと駆けてきた

「あれ?何してんの?」

私の顔と遊園地のオーナーの顔を
見てからボリスは軽く首を傾げた

「何してるも何も。ぺてん師が来てるから何してんだって聞いてたんだよ」

「えっ?オッサン何言ってんの、その子は余所者だよ」

俺が見つけたんだぜ
と笑いながらユキの肩を
軽く自分の方に寄せたボリスに
遊園地のオーナーは目を見張った

「余所者だ?そんなわけあるかよ。こいつは絶対に劇場のアイツだ‼」

「良く見なよ。全然違うじゃない‼こんな簡単なこともわからないんだから、それは帽子屋さんにからかわれる訳だよな」

『あの〜・・・・・・・』

にらみ合いながら言い争っている
二人の間に割って入ろうとしたが

「まさか名前がメリー=ゴーランドだもんな‼」

ボリスがその言葉を言い終わった後
何処からか誰かの堪忍袋の緒が
切れる音が聞こえた

(これってあれだよね・・・・巻き込まれるフラグ?いやいや・・・ムリムリムリ!!)

既に顔を下に下げているため
前髪のせいで顔が影になっていて
表情がまるで見えないゴーランドが
キレていることは表情を見なくても
読み取れた

『あの!!』

ボリスとゴーランドの間に割って入り
ゴーランドの視界からボリスを消した

『私はボリスの言う通り余所者です。元にえっと・・・・ユリウス・・そう‼ユリウスに言われましたから』

ワタワタと手で何かをジェスチャーするが
何を表しているのか全くもってわからない
更には焦りと言葉に表しにくい感情が混ざり
言葉が全体的に早口になり
それに気付いた私は
"えっと・・・・あの・・・"
と呟きながら恥ずかしさで赤くなった頬に手を当てた

「悪かったな」

『えっ?』

ぽつりと呟かれた言葉に驚き
パッとゴーランドを見上げると
昼間の太陽に負けないくらいの明るい笑みで
ガシガシと頭を撫でられた

「良く考えてみればアイツがこんなところに居るはずがないんだよな・・・・・」

申し訳ないように言った
ゴーランドの表情は陰っていた
その表情から"劇場"にいて
私と似ている人のことをとても大切に
しているということを理解してしまった

『理解していただければ、私はそれで』

構わないと言葉を紡ごうとした瞬間に
ぞわりと背後から得たいの知れぬ
悪寒を感じた
バッと後ろを振り向いたが
そこにはただ遊園地を
楽しむ人達が居るだけだった

「どうかしたか?」

『何でもないです』

心配そうに顔を覗きこむゴーランドを
少しでも安心させるために
そう言ったがゴーランドは
眉を寄せるだけだった

「そう言えば名前聞いてなかったな。俺はゴーランドだ。あんたは何て言うんだ?」

『有希です』

「ユキか・・いい名前じゃねぇか。」

そしてまた頭を撫でようとしたので
サッと後ろに引くと

「オッサンがデリカシーの無い触り方しちゃったからこの子怖がったんじゃないの?」

そう言いながら
私の肩に手を置き
「ね?」と耳元で呟く
カラフルでやけにいい声の猫を見ながら
軽く溜め息をついた

「そういやアンタ余所者だって言ってだが滞在地はもう決めているのか?」

ボリスと私のやり取りを見ていた
ゴーランドが思い出した様に言った瞬間
ボリスがパッと離れた

「そうだった‼ねぇオッサン。この子此処に住んでもらおうよ‼まだ滞在地決めてないみたいだからさ」

「ボリスにしては良いこと言うじゃねぇか」

(私を蚊帳の外にして此処での滞在地勝手に決められてるよ・・・・何だろうなぁ、この
もうなるようになれ感は)

役持ち達が盛り上がっている中
ユキはゴーランドに連れられて
遊園地内の屋敷に行っている時

ぼんやりと空を眺めた

(さようなら平凡だった日常・・・こんにちは銃弾飛び交う国での常に死亡フラグが立つ日常)

空を眺めているときの少女の表情は
何かを悟ったそんな表情だった




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