コチョウランの花に願いを

□私と時計屋
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『え?おいてけぼり?』

呟いた言葉は
誰にも届かず虚しく消えた
消えた....はずだった

「貴様此処で何をしている」

完全にぼっちになったと
思い込み項垂れていた
私の背後から
子安さんボイスが聞こえた
バッと振り返ると

黒いロングコートに
青みがかかった長い髪

時計屋 ユリウス=モンレー
がそこにいた

『っ!!!』

「・・・・・・・・・・・」

『.........?』

あれ?
彼なら普通「貴様は誰だ!!」とか
「早く帰れ!!」とか
私を見た瞬間に言うと
思っていたのに・・・・何故?

私からしてどう考えても
ユリウスの様子はおかしい様に思えた
ボーッとしていて私を見つめたまま
突っ立っている

『あの〜......』

部が悪くなり話しかけるも
ユリウスは無反応だった

『あの!!』

「!?」

少し声を張ると
やっと反応してくれた

身動き一つとらずに
ガン見されるのは
滅多に出来ない体験だったが
もう二度と御免だと思った

ユリウスが此方に
目を向けてくれている内にと
声をかけてみることにした

『貴方は誰..ですか?』

まぁ知ってるけどさ..
私にはこの空気が
耐えられないんだよ!!
ユリウス!!お願いだから
話を続けてくれよ...

僅かな願いをユリウスに
託す思いを込めて
話しかけた・・・・が!!

私の願いは儚く消えた

何故ならば
ユリウスが黙ってしまったから

「・・・・・・・・・・」

私が話し掛けた瞬間
目を軽く見開き
身動きを再びとらなくなった

この様子から驚いていることが
嫌でも分かる

てかさ........
話し掛けた途端に驚かれるって
どう言うことなのか?
私は珍獣か?
珍しくもないんだよ!!
あれ?でも...私..余所者か..
って事は...

『珍しいのか....』

「は?」

『え?』

最後の言葉だけは
言葉となっていた様で
ユリウスが少し驚きの声を
出した勿論私もだが

「・・・・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・・・・』

暫くの静寂を破ったのは
ユリウスだった



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