ハトアリ短編

□君はどうやら、鈍感らしい
1ページ/1ページ

『・・・・・・・・何しているんですか?』

私は目の前で繰り広げられた
一種の漫才ともいえる物について
首を傾げた

ペーターがアリスの名前を
叫びながら
アリスに抱き着こうとすると
タイミングを見払ったアリスが
腰を少し落として
軽くファイティングポーズ
を取った
ペーターの顔が正面に来た瞬間
アリスの鉄拳がペーターの
顔面にクリティカルヒットし
見事に吹き飛んだ
アリスは良い仕事をした
という感じに
汗を拭い遠い目をした

その場面を偶々見てしまった
私は冒頭の台詞を口にした

「ユズ!!!」

私を見付けた瞬間
パァァと顔を明るくした
アリスがパタパタと
私に駆け寄ってきた
いや・・抱き着いてきた

美少女に抱き着かれるのは
大いに構わないが
アリス大好きウサギの
目の前でアリスを嬉々として
抱き締めるのはどうかと思い
自制した

「アリス!!いつまで抱き着いているのですか!!」

ベリッという
効果音と共にアリスを
引き剥がすと
そのままアリスを
自分の腕の中に
収めたペーターは
まるでドヤッといった感じに
私を見つめてきた

エースとはまた違う
赤い瞳を何とも言えぬ表情で
見返した私にペーターは
不思議な表情をした

『?』

ペーターの意図が読めずに
ハテナを浮かべると
ペーターに抱き締められていた
アリスが深いため息をついた

「ユズ・・・・」

『えっ?どうしてアリスがため息つくの?』

アリスのため息により
更にハテナを浮かべた私に
アリスは自分より
高い位置にある
ペーターに哀れみの目線を
送っていた

一方のペーターは
いつもはピンッと立っている
耳をヘナッとさせていた

やはり私には
意味が分からなかった



君はどうやら、鈍感らしい





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ