main...長編


□動き出した時間
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《あなたのお名前
                       ───なんて言うの?》









誰────?





ああ、私だ──。幼いころの私。













《人に名前を尋ねる時は

まず自分から名乗るのが礼儀じゃないのかな?》









これは



────誰だろう。












《私はノノエイディン、っていうの》


《ふーん....

なら、ノエインって呼ぶよ》











ノエインってわたし?

私は、この人を知っているのか──?









思い出せない・・・・。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄









《ノエイン?》


《そうだよ、俺がつけた君の"名前"。


ああ、ニックネームとでも思ってくれればいいよ》




《ノエイン....。



ねぇ、
あなたのお名前もおしえて?》



《はいはい


俺はね、─────》


















「ん、.....」




朝の訪れを知らせる鳥たちの囀りが聞こえたと同時に、ノエインは目を覚ました。


まだ完全に覚醒しきれない体を起こし
伸びをして、目を醒まさせる。


「んー、

なんか夢を見てたと思うんだけどー…


駄目だな、まったく思い出せない」





ベッドから起き上がり窓を開けると
心地よい風が吹き、天気も晴れ晴れとしていた。


庭にはプーぺによって綺麗に整われ花々が
さわさわと揺れていた。







「んっ〜……」





突然、唸るような声が聞こえ
視線を巡らすと机に体を預けて眠っている同居人が目に入った。










一日目の夜、

ノエインは湖のほとりへと足をのばした。

両親の思い出の場所であったそこは静かでいて美しく、いろいろな事を自然と抱え込んでいたノエインの心をとても落ち着かした。







部屋に戻った後は、リアナとたくさんの話をした。



(多分、話してる間に私が寝てしまったのか。

リアナに悪いことしちゃったな....。)





ふっと再び、気持ち良さそうに眠るリアナに目を向け、ノエインはあることが気にかかる。



「そういえば、課題は終わったのか?」






少しずつ手をつけていた姿は目にしたが、ノエインが部屋に戻ってからは、ずっと話し続けていた。



途中途中にノエインは大丈夫なのか?と聞いたが、本人は全然平気ですよっー、と余裕の反応を見せていた。








「え、っと...これはちょっと」


机に伏せて眠る彼女の側に行ってみると、予想通り、いや予想以上のものが目に入る。


まるで枕のように自らの体の下に敷いているのは、必ず終わらせる、と意気込んでいた課題であろうノート。


しかも、ほぼ真っ白状態。



授業の始まる時間まではまだ余裕がある。




ノエインは目の前の気持ち良さそうに眠る同居人を起こすことに決めた。


「ん〜、あ、ノエインさん
おはようございます〜」



「おはようリアナ。

じゃあ、今からそれ、一緒に頑張ろうか」



ノエインのそれを示すものを見た途端、覚醒しききれていなかった目を見開き声にならない悲鳴を上げたリアナと、ノエインは共に彼女の課題に取り掛かった。





その結果、時間にぎりぎりで間に合い、リアナはイヴァンに雷を落とされずに済んだのだった。












「んん〜…!!


ノエインさん、本っ当にありがとうございましたー!
ノエインさんの教え方がすっっごく分かりやすくて、なんだか問題を解くのが楽しかったです!」


「それは良かった。
あ、じゃあ今晩も一緒にする?」

「そ、それは全力で遠慮します!!」



「ふふ、冗談だよ」



課題の提出をしに行って、戻ってきたリアナはるんるんで、そんな彼女の様子にノエインも笑みを浮かべた。









「そういえば、ノエインさん。


あの.....聞かれたくないことだったら
ごめんなさい。



もしかして、あまり夢見が良くないですか?」



「え?」





突然のリアナの質問にノエインはどきりとした。



今朝たしかにノエインは夢を見ていた。


しかし、どんな夢だったかを思い出せず
すぐに考えるのを放棄してしまった。





「な、なんで?」


「えっと、ノエインさんが先に眠りについた時に
なんだか、うなされてたんです。

くっ、とか、うっ、とかって」




(うなされてた…





駄目だ、思い出せない!)



リアナの話を聞き、再び思い出そうとするが全く思い出せない。

妙に悔しさが込み上がりノエインはどうにか思い出そうと、うーんうーん、と唸る。



「あのノエインさんっ

えっと、夢ってそういうものですからね!」


「…え?」


深く悩み続けるノエインの顔を除き混むようにしてリアナは言葉を続けた。



「見た夢がどんなに楽しい夢、悲しい夢
びっくりしちゃうような変テコな夢でも

目が覚めちゃったら
どんな、何を見ていたのかあんまり覚えてないんですっ


だから、思い出せないのなら無理に思い出さなくていいんですよっ!」




グッ、と両方の拳を握り
意気込んで言うリアナがどこか可笑しく感じたノエインは



「ぷっ、ふふ」


「あっー、笑ったーー!
ノエインさん酷いですっ

私は真面目に言ってるのにー。」




「ふふ、わかってる、わかってるよっ


ん、ありがとうリアナ」



「もうっ」




頬を膨らませるリアナも次には笑いだし
二人は朝から楽しい時間を堪能し、学院へ行く準備に取り掛かるのだった。
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