sunny spot
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「蓮ちゃん、やんな?」
店に飾る花や、雑貨を買い出しに出かけていた時に、後ろから不意に声をかけられた。
「…真島、さん」
走ったのだろうか。真島さんは若干息を切らしていた。
「…あの、なにかご用ですか」
この前の無礼を咎められるのか、と身構えたところ、真島さんはふーと息を吐き、いや、あんな、ともごもごと言い淀んだ後
ニコッと笑って
そして、声をかけられた。
「そこの喫茶店でお茶でもどうや?」
「…俺はキャバ嬢じゃなくてボーイで」
「知っとるっちゅうねん。何も店でサービスしろなんて言うてへんやろ」
「でも…」
「もちろん奢ったるで?」
大して話もしないし愛想もない俺なんかと一緒に店に入っても、つまらないだけだと断るべきだ。
でも、
そこの喫茶店
実はそこは通るたびに甘い匂いがして、皆うまそうにケーキを食べていて、ずっと行ってみたいと思っていた。
一人で入ることに特に抵抗はなかった が、一人ならばいつでもいけると先延ばしにしていた。
奢るという言葉も心を揺らがせて、それを見逃さなかった真島さんは「ええやろ?」とだめ押しで手を握ってきた。
「…じゃあ」
そういうと、真島さんは子供みたいに無邪気に、嬉しそうに笑った。