トビ長編夢・籠の中の青い鳥
□幻想郷に住まう姫
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雨の降っている湖の畔に、柿色の仮面の男が座っている。
彼の黒い衣服や髪から、雨が滴る。
しかしそれを気に留めもせず、男はぼうっと水面を見つめていた。
「いつまでここにいるつもりだ、マダラ」
蜜柑色の髪の男が後ろから声をかける。
彼は紫色の目を仮面の男に向けているが、そこからは感情が全く読み取れなかった。
「いつまでだっていいだろう。お前が心配するようなことではない」
仮面の男はそう言ってから蜜柑色の髪の男の方を振り返った。
「それより、情報は仕入れたのか」
「ああ。たくさんの情報が集まったが、どれも信じがたいものばかりだ」
「そうだろうな。幻想郷など、見ることすらできないというのに、誰が確かな情報を持っているものか。せいぜいその情報のほとんどは作り話だろうな」
ふっと笑う気配がした。
蜜柑色の髪の男は、とりあえず集めた情報を全て仮面の男に伝える。
仮面の男は黙りこんでいる。
「で、いつ行くんだ」
「まあ、気が向いた時でいいだろう」
仮面の男はそう言ってすっと立ち上がると、アジトの中へ戻っていった。