lilac

□クリスマス
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「でもすごいね!
まさか透明マントの中に入れるなんて!」
ナマエは興奮気味に言った。






その日の夜。
さっそく5人は早速透明マントを被り、夜の校内を探検した。
「いてっ!誰だ!」
シリウスがナマエの髪を掴んだ。
「ぎゃっ!痛いなぁ」
ナマエはピーターの膝を蹴った。
「う゛っ……」
ピーターが鈍い声をあげたことに誰も気がつかない。
「静かにしないと!」
リーマスがナマエとシリウスの間に止めに入った。
「そうだよ。
透明マントは音まで消してくれないんだから」
ジェームズは前に進み続ける。
「ところでこっちでいいの?」
リーマスは心配そうに聞いた。
しばらく沈黙が続き、誰も答えない。
いや、答えられない。
「……ここってどこ?」
ナマエが不安そうに聞くが、誰も答えてはくれない。
「……お気づきかもしれないが……
僕たちは迷子だ」
ジェームズがはっきりと言った。乾いた笑い声が誰もいない廊下に響いた。
「……じゃあ、どうするの?」
「帰るしかないだろ?」
「どうやって?」
「だから……誰も分からないんだよ」
シリウスはナマエの頭を小突いた。



「どうするの?」
ピーターが涙声でジェームズにすがった。
「……あはは、どうしようね」
ジェームズは尚も乾いた笑い声を上げている。
「……地図とかがあればなぁ……」
リーマスは途方に暮れたように呟いた。
「初めてだよ、こんなの」
ナマエはブルブル震えながら言った。
「あぁ、君は女の子だしね……
巻き込んでごめ……」
「こんなに楽しいクリスマス!」
その場にいたナマエ以外の4人はきょとんとした。
「……え?」
「だって毎年一人だったし」
母親は仕事で夜遅く、いつも一人でクリスマスは過ごしていたナマエからすれば、賑やかなクリスマスは憧れそのものだった。
「ルーモス」
ナマエは杖明かりを灯してあたりを見渡した。
「あ、ここって寮の近くだよ」
「帰れるの!?」
リーマスの言葉にピーターが嬉しそうに跳ねたので透明マントはするりと落ちた。
「ピーター喜び過ぎだろ」
シリウスがマントを拾ってジェームズに渡す。
「まぁ、いいクリスマスだったね」
ジェームズはナマエと目を合わせて笑った。


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