lilac 2

□ホグズミード
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「……ピーター、大丈夫かな」
「……うん」
リーマスの言葉に相槌を打つ。しかし、心ここにあらずだ。
「……ジェームズとシリウスは帰って来るまで待とうか。何せ僕たちは上級生を四人ほど吹き飛ばしてるからね……迂闊にホグズミードでバッタリ出くわしたら何をされるか……」
「……うん」
「……ナマエ、大丈夫?
……ごめんね、僕が守れなくて……ナマエに手を汚させちゃった」
「……ううん」
リーマスはあの時のことに気づいていないのだろうか。杖を持たずに魔法を使い、相手を吹き飛ばしたということを。
よく、幼い魔法使いや魔女は杖も何もなしに魔力を見せると聞いたことがある。しかし、幼い魔法使いの魔法はこれほどの力を持っているはずがない。そのうえ、本能のままに、杖を使わずに魔法を使うなどあるのだろうか。
偶然のことなのか、もしくはそう錯覚してしまっただけで本当は杖を持っていたのではないだろうか。
ここまで考え込むほどの出来事ではないのかもしれないが、ナマエにとって初めての不思議な感覚だった。


「……ナマエ、本当に大丈夫?顔色、あまり良くないよ?」
リーマスが顔をのぞき込み、ナマエは我に返った。
今は自分の心配をしている場合ではない、と。

「うん、私は平気。
……ピーター、大丈夫かな」
「なんでピーター一人にあんなにひどいことをしたんだろう……しかも少し目を離した隙に……」
リーマスは頭を抱えた。
「……そういえば、ピーターって前にもボロボロになって帰ってこなかった?……もしかしてだけどさ……」
クィディッチの練習を見に行った時だった。彼は必要以上に汚れていた。
「っ……だとしたら僕たちはなんで気づかなかったんだろう……」
「……ピーター、ずっと隠してたんじゃないかな……?とにかく聞いてみよう」
「……そうだね」
廊下の空気は酷く重くて、ナマエは曇った空を見つめた。



それから一時間後、ジェームズとシリウスが帰ってきた。事情を説明すると二人は激高した。

「俺たちに文句があんなら言えばいいだろ!」
「本当だよ。ピーター一人をいたぶるなんて……僕たちに一体、どうされたいんだろうね」
ジェームズが杖を持って立ち上がる。
「えっと……スリザリン?何年生?」
彼の瞳がこれ程怒りに燃えているのを初めて見た。
「待って、ジェームズ!
シリウスもいったん座って!」
ナマエは二人を止める。リーマスも頷いた。
「ピーターはずっと言えなかったんだよ。……気づかなかった僕らが悪い」
「じゃあ!何でピーターは言わなかったんだよ!」
シリウスはリーマスに食ってかかる。
「……きっと僕たちのことを庇っていたんだ」
ジェームズは頭を抱えた。
「……僕らって頼りなかったんだね……はぁあ……」
悲しそうに、不甲斐なさそうに、ジェームズは頭を抱えた。
「弱いと思われてたのかよ!あのピーターに!」
「シリウス!」
ナマエは騒ぎ立てるシリウスに一喝した。空気が振動するとはこのことだ。ちょうどその時、医務室の扉が開いた。
「マダム•ポンフリー!ピーターは!?」
マダム•ポンフリーが出てくるとジェームズが急き立てるように質問する。
「怪我は薬を塗ったので治りましたよ。でも、一日は様子を見ましょう」
四人は胸をなでおろした。
「じゃあ、ピーターに……」
ジェームズはホグズミードで買ってきたおやつや悪戯道具を持って医務室に入ろうとする。
「面会は許可できません。今日は帰りなさい。……彼は少し一人になりたいみたいですよ」

シリウスが立ち上がる。
「一人になりたい……?」
「……行こう、シリウス」
「ジェームズ!いいのかよ!あいつ……!」
シリウスが扉を強行突破しようとする。ジェームズは静かに腕を掴んだ。

「また、明日来よう」
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