lilac 2

□有名人
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結局のところ陸亀には変身しなかったが足も四本生えたので上出来だ。
ナマエは満足げに教室を出た。

「ナマエ!調子がいいね」
リーマスは教室を出ると駆け寄ってきた。ほかの三人は寮に向かってしまったらしい。
「うん!今日はよかった!」

「あ、あの人……!」
「普段は地面に足をつけて生活してるんだね」
すれ違ったハッフルパフの一年生がこそこそと話しているのが聞こえた。
「……私ってそんなに酷かった?」
苦笑いしながらリーマスに聞くと彼は気を使ってか首を横に振った。
「多分あまりに人間離れしていたからじゃないかな?」
リーマスのフォローに感謝しつつ、ジェームズ達のいるであろう寮に戻る。

「明日のホグズミード楽しみだね」
「私あそこに行きたいなってずっと思ってたの!この前リリーがそこのお菓子をお土産にくれて……」
「ハニーデュークス?
僕も気になってたんだ!」
二人でハニーデュークスの話で盛り上がりながら寮の近くの廊下を歩く。
「ジェームズ達にも聞いてみよう!
……あれ?」
すると寮の近くにいるはずのない人物がいた。
「レギュラス君?」
スリザリン生の彼がグリフィンドール寮の近くをうろうろするのはなにか用事がなければしないだろう。
「……シリウスに用?」
「いや、あなたに」
リーマスは気を使って寮に入っていったようだ。ナマエはレギュラスに駆け寄った。
「どうしたの?」
「父からの……預かり物」
レギュラスはぶっきら棒に言うと手紙を差し出した。
「え!?」
嬉しくなり、レギュラスにずいっと近づくと、一歩彼は後ろに下がった。
「……僕に手紙を送るついでに頼まれました」
「そっか、ありがとうね」
手紙を受け取るとレギュラスは何か言いたげな表情でこちらを見た。灰色の瞳がシリウスとよく似ている。
違うところといえば彼のように大きく笑わないところだろうか。(それとも自分だけが彼の笑顔を見ていないのか。)
「……ん?」
首を傾げるとレギュラスは何も言うことなく少しだけ目を見開いて、それを隠すようにローブを翻して去っていった。
「何だったのかな……?」
彼があまりに早足で去っていくので呆然と背中を見つめた。
「まぁ、いっか……」
彼が自分の事を快く思っていないのは知っている。きっと何か文句や暴言の一つや二つ言おうとしたのだろう。


ナマエは余計なことを考えることをやめて、手紙をポケットに入れてから寮に入った。
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