lilac 2

□3本の矢
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それから1週間はぼぼ毎日クィディッチ漬けの生活だった。ジェームズもシリウスも珍しく練習をサボらなかった。
「いよいよ、か」
試合前の緊張を取っ払うためにナマエは頬を叩いた。そして昨日の夜のことを思い出す。



──「今回の試合に勝てば優勝だ!」
試合前夜のミーティングでアレックスが談話室で熱く叫ぶ。
グリフィンドールは今のところ総合点が510点。対するレイブンクローは590点だ。この次の戦いが優勝杯の行方を握っているので、いつもよりもこの二つの寮はピリピリしていた。廊下では互いに呪いをかけ合い、何人かはフィルチに見つかり罰則を受けている。
「明日が終わればやっと嫌がらせの日々が終わるね」
ナマエはソファーの背もたれに体を預けて腕を伸ばした。というのも、ハッフルパフに勝ってから、靴が無くなったり謎の呪いをかけられたりといつも通りではないことが続いていた。一番ひどかったのはピーターにかけられた歯呪いだ。本当はナマエやジェームズ、シリウスにかけようとしたのに運悪くピーターが当たってしまったらしい。
「呪いの掛け合いなんて辞めればいいのに」
ナマエはピーターを憂いて呟いた。
「私もそう思うわ!今日もドリス・フィーランに呪いをかけられたの」
メリッサが今までにないほど険しい顔をして言った。ナマエは首を傾げる。ドリス・フィーランとはスリザリンのチェイサーだ。何故、関係がないのにメリッサに嫌がらせをするのか理解できなかった。
「あの女はこれに乗じてメリッサに嫌がらせがしたいだけだろう」
バジルの言葉にメリッサは鼻息を荒くした。
「明日だが、グウェノグ・ジョーンズをどう抑えるかが重要なんだ。チェイサーが90点は差を付けないとジェームズはスニッチが取れない」
やっとここで、まともにミーティングらしくなる。グウェノグはクィディッチに関心のある生徒なら知らない人はいないであろうレイブンクローの4年生のチェイサーだ。
「あの子、1年生の時から箒に乗るのが上手だったわ。ポテンシャルが違うのよ!……厳しい戦いになると思うわ」
諦め半分に言ったメリッサの肩をアレックスががしっと掴む。
「俺はメリッサが劣ってるとは思わない!ナマエも!シリウスもだ!」
ナマエとシリウスも肩を掴まれ、思わず仰け反った。
「でも、もしも不安なら君たちにしかないものを活かせばいいんだ!」──
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