lilac 2

□あの頃と変わらず
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何故だか少し気が楽になった気がした。考えていたことが馬鹿馬鹿しく思えた。


忘れていることさえ忘れていた大切な人たちとの、大切な思い出、大切な約束。思い出すのが遅かった。でも、本当は思い出せて嬉しかった。

心は決まった。

寮に向かっている途中、前方からジェームズとリーマスが歩いてきた。
「ナマエ、そろそろ馬車がつくらしいよ!」
「一緒に大広間で待っていようよ!」
ジェームズがナマエの肩に腕を回した。
「ねぇ、ジェームズ」
試しに、例の質問をしてみる。
「もしも、シリウスに何もかも忘れられたらどうする?」
「ん?……何がなんでも思い出させるよ。どんなことでもどんな理由でも、どんなくだらない事でもいい、思い出してくれれば十分だからね」
リーマスの方を見た。
「僕も一緒、かな」
「ナマエって悩んでるとすぐ分かるなぁ。あの倒れた日に何かあったんだろう?」
「え!?な、なんでわかるの?」
「そりゃあ……」
「ねぇ?」
ジェームズはリーマスと目を合わせて笑った。
「何か手伝えることがあったら言ってよ」
「……じゃあ、お願いしようかな。……実はね……」
全てを話すと、ジェームズとリーマスは任せろ、と息巻いた。



あんなに会いたくなかった彼に、彼らに早く会いたい。早く伝えたい。

「あ!シリウス、ピーター!」
馬車からシリウスとピーターが降りてきた。
ピーターは行きよりも荷物が格段に増えている。トランクが重すぎてなかなか階段を上がれないので、リーマスが手伝った。
「あー、疲れた。もう俺、寮に行って寝るわ」
シリウスはそう言うと、階段を上がって行く。ジェームズはナマエの背中を押した。
「ナマエ、今だよ」
頷いて彼のことを追う。
「シリウ……」
「シリウス……!」
レギュラスが真横を通り過ぎた。
「母上からの手紙です」
「いらねぇよ!捨てといてくれ!」
「ダメです!」
目の前で話す彼らが、言い合いをする彼らが、たまらなく懐かしく思えた。他にももっと彼らの記憶がある証拠だ。
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