lilac 2

□雪
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「……シリウスの弟の……」
リーマスは驚いている様だった。
「レギュラス君、どうかした?」
ナマエは微笑んだ。
「……兄はどこに?」
ジェームズは先程走り出した馬車の方を指さした。
「さっき、あれに乗っていったよ」
「……はぁ」
レギュラスは落ち込んでいるようだった。
「シリウスと何か約束してたの?」
ジェームズが聞くとレギュラスは目を逸らした。
「……別に。
……じゃあ」
そう言ってレギュラスは歩き出した。
「……レギュラス君」
「……何ですか?」
「……さっきので馬車、最後だよ」
彼の絶望した顔。ナマエは苦笑いを浮かべることしかできなかった。

「ごめんね、ハグリッド」
「いいってことよ!お前さんの願いなら叶えてやんねぇとな!」
ナマエはハグリッドに追加の馬車を出してもらった。
「ほら、レギュラス君!おいで!」
ナマエはトランクを引っ張りあげる。
「セストラルが勝手に目的地に向かってくれる。安心して乗ってくれ」
ハグリッドは親指を立てた。見えないものを頼るというのはそこそこ勇気のいるものだ。
馬車がゆっくりと動き出す。
「レギュラス君?」
「……はい」
「この前は手紙ありがとうね」
レギュラスはナマエから目を逸らした。
「いや、別に」
レギュラスは外を見つめたまま言った。外は雪が降り始めた。
「オリオンさんには本当に感謝してるんだ。私が知らないことをたくさん教えてくれる……昔のことをたくさん」
「……僕もあなたを覚えてますよ」
「……え?」
ナマエは目を見開く。
「あなたの父上が亡くなる前……最後に会った……雪の日に約束したんです。覚えてますか?」
「……それは」
残念ながら不思議なほどに幼少期の記憶がない。ナマエは下を向いた。
「……ごめん」
「……そうですか」
レギュラスは外を見つめたまま、少し悲しそうな顔をした。
「もしよかったら……!教えてくれないかな?その約束」
レギュラスはこちらを向いた。灰色の瞳と初めてしっかりと目が合った。
「また会おう、そう約束したんです」
「え……」
ナマエは再び目を見開いた。
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