lilac

□夏休み、そして誕生日
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──君は希望で、僕の遺志そのもの……──







ポッター宅にお世話になってかれこれ一ヶ月経った。
ポッター夫妻はナマエのことを娘のように可愛がってくれて何不自由ない、楽しい毎日を過ごしている。

「今日で一年……」
ナマエは自分の部屋にかかっているカレンダーを見つめて呟いた。

今日は1972年7月31日だ。

ちょうど一年前の今日、ナマエはサニーによってこの世界に連れられて来た。しかもそのサニーはナマエの父親が命令した何かによってつれてきたわけだ。つくづく父親が何者だったのか不思議に思わずにはいられない。


「長いようで短かったなぁ……」
よく思えばこの一年、様々なことがあった。
自分の新たな一面に気づいたことも勿論だが、あのハリーの父親たちの時代に自分がいて、まして親友と名乗っているだなんて去年の自分が聞いたら驚くだろう。いや、驚くどころじゃないかもしれない。卒倒沙汰だろう。

「そういえば、この世界に私を呼んだのはお父さん……だっけ」

1年生の時には自分のことで精一杯であまりに忙しかったので、考えるのも忘れていたが、2年生になったらダンブルドアに父親について聞きに行こうと思った。


「あー……。
サニーがいればすぐに聞くんだけどなぁ。サニー、来ないかな……」
1年前の今日、初めて会ってすぐに別れたサニーが恋しく思えた。恐らくは、唯一全てを知っている人物である。


「まぁ、どこにいるかもわからないし無理か……」
その時、バチンという大きな音が後ろで鳴る。ナマエは聞き覚えのある、その音に勢いよく振り向いた。

「ナマエお嬢様!
お久しぶりでございます!」
1年前と少しも変わらない姿。相変わらずのキーキー声にナマエは何故か喜びすら感じる。
「サニー!!」
ぎゅと抱きしめるとサニーは少し驚いたように、しかしきちんと腕をナマエに回した。

「お元気でしたか?
ダンブルドア校長はお元気だとおっしゃってましたが、サニーめは心配でした……!」
「じゃあ出てきてくれればよかったのに……!」
ナマエはサニーを放した。すると、サニーは困った様に俯く。
「サニーめは旦那様に命令されていました。……呼ばれた時にしか出てきてはいけないと……」
寂しそうに言ったサニーに少し申し訳なさが込み上げる。
「そっか、ごめんね」
「いえいえ!滅相もございません!
お嬢様がサニーめに謝るなど……!」
サニーが自分をお仕置きしようと、近くの机に頭をぶつけようとするので、ナマエは慌てて止めに入ってサニーをベッドに座らせた。
「えっと、私が呼び出したのには聞きたいことがあったからなの」
「はい!何なりと!」
サニーは目を輝かせながら意気込んだ。
「あの……
単刀直入に言うと、私のお父さんって何者なの?」
サニーは肩を揺らすと、わっと泣き出した。
「サニーは約束を守らなければなりません!旦那様に言ってはいけないと言われてしまったのです!サニーは賢いしもべ妖精だから言ってはならないのです!」
あまりに大声で泣くので、ナマエは近くにあったタオルケットで涙を拭き、口を抑えた。
「あぁ、ナマエ様は何とお優しい!サニーは気持ちに応えられないことが辛いです!」
1年前とやり取りがあまり変わっていない。
「わかった!
わかったからサニー、もう大丈夫だよ」
ナマエはサニーの背骨の浮き出た背中を優しくさすった。サニーに父親のことを聞くのは賢明ではないようだ。
「じゃあ、違う質問をしていい?
お父さんについてじゃないから……」
サニーは鼻をかむと、ナマエを見つめた。
「サニーはできる限り答えます…っ」
「ありがとう。
私がいつ、元の世界に戻るのかってことなんだけど……」
恐る恐るサニーの様子を伺うと泣き喚くことはなさそうだ。
「それは……
お嬢様が成長するまでと旦那様がおっしゃってました」
何となく予想のついていた答えにナマエは頷いた。
「ありがとう。
それともう一つ。
……お母さんは元気?」
どうせ仕事三昧だろうとナマエは予想していた。
「奥様ですか……?
……あぁ!サニーめは馬鹿です!」
サニーは自分をお仕置きしようとベッドに頭を打ちつけた。(その時すごい勢いで跳ね返った。)
「サニー、やめて。
何が馬鹿だったの?」
ナマエが優しく言うと、サニーはベッドに座り直した。
「サニーめは1年前に大事なことを言いませんでした!お嬢様を悩ませた事でしょう……!これがある限り大丈夫なのです!」
サニーは洋服の内側から長い鎖に取り付けられた金色の時計のような物を取り出した。
よく見るとそれは懐中時計のようなものだ。
「あ、それって」
「改造されたタイムターナーです!」
ちょうど1年前の今日にも使ったものだ。
「改造されたタイムターナー……
でも何でそれがある限り大丈夫なの?」
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