lilac

□友達
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気付けば入学して一週間が経っていた。
授業にも大方慣れてきたところだ。
その中でナマエが一番楽しかった授業は断トツで飛行訓練だった。

「ナマエ、おはよう!」
「あ、エルヴィス!アシュトンもおはよう」
アシュトンはレイブンクローの1年生だ。ナマエ的には少し不思議な人、という印象だ。
「おう」
この通り違う寮にも友達ができて、滑り出しは好調だ。毎日が新しいことばかりで新鮮で楽しい。
ナマエは機嫌よく大広間に向かう階段を下った。

普段、ほとんどリーマスとたまに一人になっているピーターと行動をとっていた。

リーマスといるときも、ピーターといるときもとても楽しい。

しかし、ナマエにはずっと心の奥底で渦巻いている問題がある。







「いただきまーす……」
今日は土曜日だが、早起きをして早く朝食をとっていた。

トーストをかじっていると、一通の手紙が上から落ちてくる。
ハグリッドからだ。

「ん?何かな?」
ナマエはトーストを口にくわえたまま手紙を読み始めた。

ーーナマエへ
もう入学して一週間だな。
学校生活はどうだ?
よかったらいろいろ聞かせておくれ。
小屋で待ってる。

PS.新しい友達も一緒に来たらどうだ?歓迎するぞ!

ハグリッドーー

ナマエはにやにやしながら手紙を読むと、席を立った。

大広間を出るとちょうどリーマスとピーター、そしてジェームズとシリウスがおりてきて鉢合わせした。
「ナマエおはよう」
「リーマスおはよう
あのさ……!」
「ん?何?」
ナマエはそこで言葉が喉に詰まった。
せっかく彼はジェームズ達と楽しんでいるのに自分が邪魔をするのは気が引ける。
「ううん、何でもない……!
じゃあ、あとでね」
ナマエは手を振るとハグリッドの小屋へ向かった。


「ハグリッド!おはよう!」
扉をどんどん叩くと、ハグリッドが扉をあけた。ファングは朝から元気でナマエに飛びかかると頬を舐めまわす。
「ナマエおはよう。
まぁ、入れや。
思ったよりも早く来たな!」
「うん……まぁ、特にすることもないからね。
あははっ、ファング!くすぐったいよー」
ナマエは小屋に入ると椅子に腰掛けた。
椅子はとても大きく、ナマエがあと2、3人は座れる。
ファングはナマエの膝に頭を乗せて尻尾を振っている。

「紅茶でいいか?」
「うん!ありがと」
ナマエはファングを撫でた。

「お前さん、新しく友達はできたのか?」
ハグリッドは出来上がった紅茶をナマエに渡すと、自分も椅子に座って聞いた。
「うん。
できたよ」
「そりゃ、よかった」
ハグリッドは安心したのか、安堵のため息を漏らした。
「でも、そう思ってるのは私だけかも」
ナマエはこの一週間の間に抱いた気持ちが溢れてくるのを感じた。
心の中はこの問題のせいで、ずっと不安だった。

「何でそんなこと思うんだ?」
ハグリッドは心配そうに聞いた。
「だって、やっぱり男の子って男の子といる方が楽しいでしょ?
面白いし、ふざけることだってできるし。
やっぱり、女子なんかといるのはつまらないはずだよ……」
ナマエは俯いた。自分で言葉にすることでさらに傷ついた気がした。
「越えられない壁なんだよ、きっと」
「そんなことあるもんか!」
ナマエは小さい声で言ったが、ハグリッドにはきちんと聞こえていたようだ。
「いい例が俺とお前さんの母親だ!
俺は胸を張って言えるぞ!
……マリは一緒にいて楽しかった親友だってな!」
ハグリッドは親指を立てて笑った。
「そんなに気にすんな」
ハグリッドはナマエの肩を叩いた。
「ありがとう、ハグリッド」
ナマエが笑いかけると、ハグリッドは何かを思い出したように探し物を始めた。
「おぉ……
これだ、これだ……」
ハグリッドの大きな手に一枚の紙切れのようなものが乗っていた。
「なあに?」
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