lilac

□入学式
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ホグワーツに来て、この世界に来て一ヶ月。
毎日が発見ばかりのナマエは様々なことを覚えては吸収していった。


この一ヶ月間母親とは会っていないことに、ナマエは少し心配していたがサニーが色々と話してくれただろうと信じ、警察に捜索願を出していないことを祈った。


「明日からー、ホグワーツー♪」
ナマエは校長室へ来ると新品のトランクにいろいろなものを詰め込みながら鼻歌交じりに呟く。トランクはハグリッドが入学祝いにくれたもので、お手製だそうだ。何かの皮で作られているらしく非常に頑丈でなんでも跳ね返すだろう。
「ナマエ、君が今いるところはどこかの?」
ダンブルドアは微笑みながら言うと、机の引き出しをあけた。
「あ、確かに!」
ナマエは遠足前夜の小学生のように浮かれていた。

「君の性格は割と母親に似たのかもしれん」
ダンブルドアはそういいながら机の引き出しを閉めて、立ち上がる。
「あぁ、そうじゃ……ずっとここに置いといたんじゃ……」
ダンブルドアは探し物を見つけるとナマエの前まで来た。
「……先生?」
ナマエは床に広げていた荷物をトランクに詰め直すという動作を止めて、ダンブルドアを見上げた。
「……これは」
ダンブルドアは長い指からロケットのようなものをぶら下げているナマエは立ち上がるとそれをじっと見た。
「ミスター・ミョウジが……君の父親がわしに預けたものじゃ」
「お父さんが……」
ナマエはそっとそれに触れた。キラキラと光る赤い宝石が埋め込まれている。
「……綺麗」
ナマエの口から無意識に洩れたため息。それ程に綺麗だった。
「でも何でお父さんはそれを先生に預けたの?」
ダンブルドアは微笑むとロケットをナマエの首にかけた。
「ナマエ、これはわしが彼から君へ渡すよう頼まれたものじゃ。
とても大事なものじゃ、大切にしなさい」
「お父さんが私に……?」
ナマエはサニーに初めて会ったときのことを思い出した。サニーの言っていた父親の死ぬ前の命令。他にも父親は死ぬ前にいろいろなことを残していったのだろうか。

もしかしたら父は自分が事故で死ぬと分かっていたのではないだろうか。
ナマエはそんなことはないだろうと、浮かんだ考えを打ち消した。
人が自分の死を、まして事故を予測するなど魔法使いであってもできないだろう。


「彼は……亡くなる前に君を守るようにとわしにこれを託していった」
ダンブルドアが言った。
「これは彼の形見じゃ。
そして、ナマエ。
君が今持っている杖も……じゃ」
ナマエは杖を取り出してじっと見つめた。
「これが……お父さんの……?」
ナマエの頭の中には杖を振っている見たこともない父親の影が見えた気がした。
「先生……」
「なんじゃ?」
ダンブルドアは優しく問いかけた。
「私、よく分からないことだらけだけど……
立派な魔女になりたい……!」
きっと父親はそれを望んでこの世界に送ったのだろう、とナマエは自分なりの解釈をした。

ダンブルドアは青い瞳をキラキラさせた。
「わしもできるうる限りのサポートをしよう」
「じゃあ勉強頑張らないと……!」
ナマエは自分で言って自分で笑いそうになった。
今まで一度もそんなことを言ったことはなかったからだ。
「勉強以外ものう。
ナマエ、わしから一つ提案があるんじゃ。
明日、キングズクロス駅からここまで来てはどうかの?」
ダンブルドアが言った言葉に首を傾げる。
「何で?」
「スタートはみんな一緒じゃ。
君だけここにいては他の子よりも遅いかもしれないからのう」
ダンブルドアはふぉ、ふぉと笑うと早く寝るように促した。
ナマエはトランクを引きずって校長室を出ると必要の部屋──今は自分の部屋として使っている──へ向かった。



朝になるとナマエはテーブルに置いてあったサンドイッチを食べて、身支度を整えた。洋服はこの一ヶ月の間にロンドンに行ったりして買ったものだ。

思い返せばこの一ヶ月、意外にも充実したものだった。ナマエが何より驚いたのは魔法の道具ではなく、グリンゴッツへ行った時に見た自分の両親の金庫だ。溢れんばかりの金貨にナマエは唖然としてしまった。
帰ってきてからダンブルドアに聞いたが、父親は純血の名家の一人息子だったらしいので、ボンボンだったようだ。



「さて、準備も終わったし……
予習もちょっとだけしたし……
杖も持ってるし……」
トランク内をもう一度杖でさしながら確認すると勢いよく閉めて、立ち上がった。

ナマエはトランクを持ってダンブルドアのいる校長室へ向かう。

「先生!
準備終わったー!」

校長室へ入るとダンブルドアは椅子から立ち上がる。
「十時……ならば丁度いいのう。
そろそろじゃ。
ナマエ、良い旅を」
ダンブルドアが手を差し出したので、ナマエはきちんとトランクの持ち手を握り直し、腕に掴まった。

そして次の瞬間、目を開くとそこは白い煙の中だった。
「着いた……?」
辺りを見渡しても、ダンブルドアの姿はない。
「うわー……どうしよう」
ナマエはとにかく歩こうと白い煙の中を歩いた。
視界が開けるとそこには、圧倒されるような赤い汽車。
「……ホグワーツ特急!!」
ナマエは歓喜した。
周りを見渡すとまだ人は疎らで、賑やかさは感じない。
ナマエはトランクを持ちながら特急に乗り込むと、どのコンパートメントにしようかと通路を歩いた。
「端っこでいいかな」
最後尾まで来てしまったので、ドアを開けて中へ入った。
そしてトランクを自分の脇に置いて大人しく座る。

しばらくの間、胸を踊らせながら窓の外を見ていたが、あまり人がいないので面白くはない。ナマエはいつの間にか頬杖をつきながら眠りについてしまった。




「すみません。
ここ、いいですか?」
ナマエは頬杖をつきながら寝ていたが、肘がずり落ちて頭を窓に打ち付けた。痛みで目が覚めるとは、寝覚めが悪い。
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