lilac 2

□情けは人の為ならず
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ピーターがホグズミードで殴られていたことは次の日には学校中にすぐに広まった。そして、それを助けた人物のことも。
「ナマエとリーマスはヒーローだよ!」
昼食の時間、大広間でピーターは声高らかに言った。
「確かに凄いわよね!」
アイリーンがパンを口に突っ込みながら同調している。ミランダや、メリー、アレックスにメリッサまで頷いていた。
他の寮生も聞き耳を立てている。
「ピーター……僕は何も……」
リーマスは顔を少し赤くしながら、困ったように言った。
「ピーター、そんなに色んな人に言わないでよ……」
ナマエは苦笑いを浮かべてピーターの袖を引いた。
「ぺティグリュー!
教えてよ!ナマエがいきなりムキムキマッチョになって上級生を吹き飛ばしたって本当?」
ハッフルパフ生の2年生のブライス・エルムズが笑顔で聞いた。彼女の髪の毛は彼女の頭の中と同じようにフワフワとしていることで有名だ。
「それは違う!」
ナマエは勢い良く否定する。
「あれ?違うの?」
不思議そうにナマエの腕を触って確かめている。思わずため息が出てしまった。
「ナマエってばまた、有名になっちゃって……」
ジェームズがニヤニヤしながら言った。


「ナマエ!あの噂本当なの!?」
空気感が嫌になり、そそくさと大広間を出ると、リリーがスネイプの腕を引きながら近づいてきた。
「いや、私はムキムキマッチョになったりしてないよ!?」
「は?」
スネイプは首をかしげている。
「あぁ、さすがにその事は嘘だって知ってるわよ。そっちじゃなくて、あなたが1人で4人の上級生を吹き飛ばしたって話よ!いつのまにそんな魔法……」
「どうせ、ポッターとブラックに吹き込まれたんだろう?」
スネイプは鼻を鳴らした。
「違うよ!なんだか勝手に……こう、パンッて」
ジェスチャーすると2人は頭上にはてなマークを浮かべた。
「……とにかく!1人でやったなら気をつけて!絶対1人で歩いちゃダメ!」
「何で?」
今度はナマエがはてなマークを浮かべる番だった。
「だってセブが言ってたもの!スリザリンのやつらがやり返しに来るって」
「なっ、リリー!」
「全くスネイプは私のことを心配してくれて……本当に優しい子だなぁ」
ニヤニヤしながらスネイプを見つめると、彼はあからさまに嫌な顔をした。
「違う!断じて有り得ない!悪寒が走るようなことを言うな!気持ち悪い!」
「気持ち悪いのは君だろ、スニベリー?」
「お前、エバンズだけじゃなくてナマエも好きなのか」
タイミング悪く、ジェームズとシリウスが大広間から出てきた。後ろにはリーマスとピーターもいる。
「生憎、注意を受けなくてもナマエは僕たちが守るからね」
ジェームズは自慢げにスネイプを見た。
「あら、それは心配だわ。
……セブ、行きましょう」
リリーはスネイプの腕を引いた。
「おや、エバンズ?どうして僕をそんなに見つめてくるんだい?」
ジェームズは期待を込めた目で聞く。リリーは豊かな赤髪をなびかせて振り返ると、ジェームズにグイッと近づいた。
「あなたのことが吐き気がするほど嫌いだからよ。それと、教えてあげるけど私はあなたを睨んでいるだけ。じゃあね」
再び赤髪をなびかせ、スネイプの腕を引きながらリリーは去っていった。ナマエはあちゃー、と頭を抱えた。
「何だよジェームズ、やっぱり勘違いじゃねぇか」
シリウスは乾いた笑い声を上げた。
「彼女ほど僕に熱い視線を送ってくれる人はいないからね」
ナマエはリリーに後で謝っておこうと思った。


「実はあるものを捕まえたんだ。それを今日、みんなに見せたいと思う」
闇の魔術に対する防衛術の授業でルイスは大きな箱を持ってきた。ここ最近の授業は黒板に書かれたことを書き写すことが多かったので、みんな身を乗り出す。
「昨日の夜、たまたま見つけたんだ。驚いたよ、いきなり大きな蜘蛛が目の前に現れたんだ」
女子生徒は小さな悲鳴をあげた。
「あ、僕はそう見えるってだけであって君たちにはもっと恐ろしいものに見えるかもしれない。優秀な諸君は気づいたかな?」
「ボガート?」
ナマエはポツリとつぶやいた。
「正解!じゃあ、ナマエ!前においで!」
「腰を抜かすなよ……いてっ」
ナマエはシリウスの爪先を踏むと前に出た。
「じゃあ、楽しいことを想像しながら……リディクラス!……OK?」
なかなかざっくりした説明だ。だが、この魔法は知っている。リーマスをちらっと見ると、ナマエは杖を力強く握る。
「はい」
苦手なものといえば雷くらいしか浮かばないので、心構えはできている。
「開けるよ……それっ!」
箱が開いた。
すると、いきなり緑色の強い光が目の前でスパークした。そして、黒い人影のようなものが奥で揺らめいた気がした。いや、もしかしたら目が眩んで、見えた気がしただけかもしれない。
「ん?リディクラス!!」
正直、怖くもなんともない。ナマエは唱えた後、先生を見つめた。
「……じゃあ、次!ファーガソン!」
ルイスは髪をクシャッとかきあげ、反応に少し困ったような顔をした。
ナマエが退き、ミランダがボガートの前に立つと大きな鼠が現れた。
「や、やだ!……リ、リディクラス!」
ネズミはフラダンスをしだした。隣にいるアイリーンの前では、ボガートはクィディッチで大怪我をした兄、アレックスの姿に変わった。
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