lilac 2

□クリスマスパーティー
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霞む視界の中、人影が優しく語りかける。
「……ナマエ、君は……だ」
言葉はところどころ聞こえないが、安心する声だ。
「ごめんよ……」
靄がかった影から大きく骨ばった手が伸びてきて、頭を撫でられる。暖かく、優しい手つきに懐かしい感覚になり、いつまでも撫でて欲しい、そんな気持ちになった。
──ナマエ……
「……君に…………しかない」
──ナマエ!
その後、以前にも見たことがある緑色の光が視界を満たした。そして美しくも、悲しい光に意識が遠のく。まだ見ていたい、そう思って手を伸ばそうとした。
──ナマエ!!
「は、はい!」

再び名前を呼ばれ目を開くと、そこは校長室だった。目を擦り、周囲を見渡す。もちろんそこにはダンブルドアが立っていた。
「ナマエ、手応えはどうじゃ?」
「……あ〜、えっと……正直に言うと自ら心を開いているというか……」
「そうじゃ。君は記憶を取り戻そうとするあまり、自ら扉を開いてしまっているんじゃ」
ダンブルドアの顔には先程までの微笑みはなく、深刻な表情をしていた。
「……ごめんなさい」
「……君の事情を知ると仕方あるまい……と言いたいところじゃが目的を見失うことは感心しないのう」
緑の光の奥で何が起きているのか、そんなことを考えるうちに目的を見失いかけていた。
「……先生、もう1回お願いしても?」
ダンブルドアは微笑むと、頷いた。ナマエは杖を握って構え、再び開心術をかけられた。

それから長針が1周ほど回った頃、ダンブルドアとの特訓は終わった。
「ナマエ、明日はホグズミード村に行くのかのう」
「いってきまーす……」
椅子の近くのテーブルに置かれた紅茶を啜り、皿に盛り付けられているチョコレートを齧る。
「くれぐれも悪戯は程々に、じゃよ。マクゴナガル先生の首が回らなくなってしまうからのう」
青い瞳をキラキラさせているところを見ると、ダンブルドアは悪戯に対して否定はしていないように感じた。
「任せて、先生!人を不幸にする悪戯はしない!」
力任せに椅子から立ち上がると、お礼を言って校長室を後にする。

「……今日も疲れた……」
ふらつきながら満月に照らされた廊下を歩く。開心術をかけられた後はどうにも体が重くなる。最近は幾分か慣れてきたが、連続して行うと歩くのもしんどくなるので、寮まで戻る間に何度か休憩して歩いていた。

談話室に着く頃には眠気と疲れと空腹で意識が飛びそうだった。
「あ、ナマエが帰ってきた!」
ピーターは先程まで開いていた本を閉じる。
「罰則ご苦労さま」
シリウスは鼻で笑った。
「何回も言うけど罰則じゃないってば」
倒れ込むようにシリウスの隣に座ると、ジェームズが不思議そうな表情を浮かべて近づいてきた。

「ナマエ〜、何だか最近手を抜いない?」
ジェームズの言葉にドキッとしてしまったのは、思い当たる節が山ほどあるからだ。
「……ちょっと調子が……」
アニメーガスの修得だが、ジェームズとシリウスは7割ほど、ピーターは5割、ナマエは4割といった進み具合だ。
「最近妙に付き合いが悪かったり、体調が悪かったりしただろう?……何か隠してない?」
探るような眼差しに思わず目を逸らしてしまう。
「それはダンブルドアに父親のこと聞きに行ってるだけだって!体調は悪くないんだけど、最近、年なのかな?疲れやすいんだよね」
嘘をつくのが下手である自覚があるので、間違ってはいないことを口にする。
「僕らに隠し事はなしだよ!もし悩んでることがあったら……その、例えば僕達に話しにくいならエバンスでもいいから相談しなよ!絶対だ!」
何やら心配をかけているようで申し訳ない。
「わかった!じゃあおやすみ、ジェームズ。シリウスとピーターもおやすみ」
最後の気力を振り絞って、元気に手を振る。
「おやすみ、ナマエ!」
「明日はリーマスを迎えに行くから寝坊するなよ!」
「はーい」
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