lilac 2

□After rain comes fair weather.
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選抜の日の喧嘩後、寮に戻るとジェームズのお陰かシリウスは落ち着いていた。しかし、やはりあの日から以前よりも素っ気ない。ナマエは謝った時に見えない壁のようなものを感じていた。
「……はぁ」
あれからもう3週間が経とうとしている。ナマエは少しもやっとした気持ちを抱えながら、変身術の教科書を広げた。変身術の授業が終わった日の放課後はピーターと変身術の復習をする。本日は晴れているので中庭で復習をしていた。
「今日の授業も難しかったね……ハリネズミを針山にすることがあんなに難しいなんて知らなかったよ」
ピーターは大きな溜息をつきながら教科書の表紙をパタパタといじった。
4年生ともなれば高度な技術も必要となり、ジェームズによる授業外の特訓がなければ、全くと言っていいほどついていけない。そして復習だけでなく、アニメーガスになるための特訓も行っているのでてんてこ舞いだ。
「ハリネズミなんてほとんど針山なのにね」
ナマエは息抜きで羊皮紙を蝶に変え、ジェームズはそれを捕まえた。この呪文もできるようになるまで相当な時間を費やした。



「最近ずいぶん頑張るじゃないか!」
「……ハリネズミが可哀想だしね」
ナマエが遠い目をしてつぶやくと、ジェームズはあぁ、なるほどと納得いったような顔をした。本日の授業でハリネズミがアルマジロに変わった瞬間にジェームズは反射的に笑ってしまったが、ナマエの気持ちを考えると必死に堪えるしかなかった。
「僕はハリネズミを杖でつついて終わっちゃったよ」
ピーターは肩を落として呟いた。ナマエも隣でもう一度ため息をついた。
「ナマエ……色々あるんだろうけどそんなに落ち込むなって。気にしなくていいんだよ」
シリウスとの関係のせいだと分かってはいるものの、どうしようもできないことにジェームズ自身ももどかしさを感じていた。



「そうだ、気分転換でもしておいでよ!勉強漬けは体に良くないぞ!」
「あー、図書館に行ってちょっと変身術の本借りてくるよ」
ナマエは立ち上がるとあたりを見渡す。やはりシリウスはいなかった。リーマスとどこかに行っているのだろう。明らかに避けられていることが、自分のまいた種とはいえ辛く感じた。
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