lilac 2

□バレンタイン
1ページ/2ページ

その日はどこかみんなソワソワしていた。
ナマエは授業が永遠に終わらないで欲しい、そう思いながら過ごしていた。こんなことは初めてだ。
しかし思いも虚しく、チャイムが響き渡る。思わず大きなため息をついた。
教室を出ると、そこは戦場だった。

「シリウスーー!」
「ジェームズ!!」
昨年にも増して、上は7年生から下は1年生までの大勢の女子たちがシリウスとジェームズに群がる。
こぞって彼女達はメッセージカードやプレゼントを渡す。

来たのだ。バレンタインが。

しかし今年は一味違った。
「ナマエ!!これ受け取って!!」
いつもならゴール地点のシリウスかジェームズに渡す経由地として扱われていた。しかし、今年はナマエがゴール地点にもなっている。
「ナマエ、あなたって本当にすごいわ!同じ女子でもあなたほどかっこいい人見たことない!!」
「そんなことないよ、でもありがとう」
照れくさいことをみんな惜しげも無く言ってくる。
「これからも頑張って!」
「女子の希望の星よ!」
あれよあれよと手のひらにプレゼントやカードを乗せられる。さらには勝手に鞄を開けて突っ込んでくる人までいた。
「私、何か目立つことしたっけ……」
かぼちゃジュースを飲み干し、ぼそっと呟くとジェームズとシリウスは顔を見合わせた。
「よく言うぜ」
「入学してからずーっと僕らと一緒に悪戯しているだけで十分目立ってたよ!」
「あと、僕のことも助けてくれたもんね!!」
「それにクィディッチでスーパープレイも決めてるからね」
口々にお前の責任だと言っているようだ。
「……今後気をつけます」
「それは無理だな」
シリウスは鼻で笑った。

「あ、ナマエ!」
なるべく人通りの少ない廊下を通って教室に移動している途中、後ろから声をかけられ大きく肩を揺らしてしまった。
「はいっ!!?」
振り返るとリリーが不思議そうな顔をして立っていた。
「ごめんなさい、驚かせちゃったかしら?」
「あー、そんなことないよ!」
「なんだか大変そうね」
「嬉しいんだけど、ちょっと慣れないから……」
「ナマエ、気をつけてね。あなたのことを素直にすごいと言える人もいれば、妬む人もいるわ。リーマスも心配してたわ」
リリーはコソッと耳打ちするように言った。
「リリー!」
メリーが後ろから走ってくると、リリーはナマエの背を叩いた。
「もし何かあったらすぐに言うのよ?私だってナマエの友達なんだから!」
少し不安だった気持ちが和らいだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ