作品3

□2014☆夏企画
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リクエスト内容
[イゾウさんに壁ドンされる]



気付いたら目で追ってるってあるだろう?
まさにそれ。
最初は気にも止めちゃいなかった。

秀でて別嬪さんってわけでもねぇし、
噎せ返る程の色気があるわけでもねぇし。

どっちかっつったら
まだまだ餓鬼の部類に入る。
言動は幼稚だし、頭弱ぇんじゃねぇかとも思う。
けど、いつの間にか、おれァあいつに囚われてた。




[可愛いBABY、ハイハイ!]




「マルコたいちょー!」
「あァ?」
「子供ほしーです」
「そうかい、サッチにでも頼めよい」
「…ケチパイン」



ナツコが色んな奴にちょっかい出すのは、今に始まった事じゃねぇ。とは言え、色恋のいの字もねぇようなちょっかいの出し方だが。



「サッチたいちょー!子供ほしーです」
「ぶっ、何言っちゃってんの?!」
「だって子供かわいーじゃないですか」
「ナツコチャン、意味わかってんの?」
「サッチたいちょーもケチって事はわかりました」
「……」



恋仲の奴がいるって噂も聞いた事がねぇ。
それなのに子供が欲しいとうるせぇナツコ。
マルコにあしらわれ、サッチに呆れられ、
ナツコの行き着く先はいつも決まってる。


「イゾウたいちょー!」


ほうら、おいでなすった。


「たいちょーってば」
「キャンキャン吠えるんじゃあねぇよ」


犬じゃあるめぇし、
そう告げて歩を緩める事無く自室へと向かえば、唇を尖らせたまま小走りで着いて来る。そんなコイツが愛おしくてついつい意地悪したくなるおれもまた、餓鬼なのかも知れねぇな。


「イゾウたいちょー」
「なんだよ」
「子供ほしーです」
「そうかい、そりゃ良かったな」


扉に手をかけるおれの着物の端を握り、『いじわる』と呟くナツコ。沸々と加虐心と言うか、征服欲と言うかそんなもんが胸中を蠢く。

だってそうだろう?
惚れた女が他の野郎に子供が欲しいなどと宣って、おれが一番後回しだなんてあっちゃならねぇ。
…まァ、要は悋気って奴さね。情けねぇ。



「ねー、たいちっ?!」
「…うるせぇぞ」



未だ端を握る手を掴んで
クルリと体勢を反転させてやる。
そのままの勢いでナツコの細い身体を壁に押し付けて、顔の少し上に音を立てる様に自身の右手をついて、グイッと顔を近付けて。

お互いの呼吸が混じりそうな程の距離。
僅かに潤んだナツコの瞳が
やけにおれの扇情を煽る。



「…ビックリ、します…」
「餓鬼が餓鬼作ってどうすんだよ」
「ガキじゃないですよ、私」
「…ハッ、そうかよ。相手もいねぇ癖に」
「だって子供ほしーんですもん」
「……ヘェ?」
「?!」



むくれかえるナツコの表情。
そんな顔をされると、おれの中の悪戯心が顔を出すってぇのわからねぇのかね。あぁ、わかっていたらこんな事も言うわけねぇ、か。

空いている左手で
ナツコの顎を掬い上げてやれば、
見開かれる目に、呑み込まれる吐息。


「そんなに子供が欲しいんならよう…」
「た、たいちょー?」



かち合った視線は決して逸らさずに
今にも唇が触れそうな距離は保ったまま。
わざと掠れさせた声で言葉を紡ぐ。



「…おれが孕ませてやろうか?ん?」
「……ッ、」



そのままの流れで、真っ赤に染まったナツコの耳まで唇を移動させて『その覚悟があるンなら、いつでもお出でなんし』と囁いて、カリ、と耳朶を一齧りしてやれば。

音がしそうな程に顔全体を染め上げて
ナツコはヘナヘナとその場にヘタリ込んだ。



「な、ななな…っ」
「こんくれぇで腰抜かすようじゃ、まだまだだなァ」



はくはくと、
まるで金魚のように。
多分ナツコの頭は混乱中だ。

これに懲りて
おれ以外の野郎にちょっかい出さなくなりゃァ、それこそ万々歳だな、と。そんな事を思いながら、やけに熱いてめぇの頬を一撫でして、人知れずゆっくり口角を吊り上げた。










─歩く○○製造機──

(に、妊娠したかも…!)
(…するかよ、バカ)
(イゾウたいちょーはこうやって…)
(あン?)
(子種撒き散らかしてたんですね)
(こだ…っ、)
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