作品3

□2014☆夏企画
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リクエスト内容
〔ハンコック遊びするイゾウ〕





最近、モビーで変な遊びが流行っている。
噂の海賊女帝、ボア・ハンコックの真似事だ。

流行っていると言っても、
中心になっているのはおちゃらけ担当
エース隊長にサッチ隊長。
それをクルー達が囃し立てるという図だ。



「おれは盗み食いしても許されーる!」



確か、見下しすぎて見上げるポーズ。
視線は天に…否、ほぼ後ろに。指は一本下方向を指してそして最後の決め台詞。



「何故ならおれはカッコイイから!」
「は?!おま、エース!また盗み食いしたのか?!」
「ゆ、許されーる!」
「許さねぇよバカ!」



ぎゃいぎゃい。
なんだよ、おれじょてーだぞ!と。
ものすごーく不満気に唇を尖らせるエース隊長の頭に、サッチ隊長は拳骨を落とす。そもそも女帝は盗み食いなんてしないと思うのだけど。



「何騒いでんだ、アイツら」
「イゾウ隊長、なんか女帝の真似っ子みたいですよ」
「ヘェ…」



女帝のねぇ…なんて、そちらを見やるイゾウ隊長。何だか興味ありそうなのは私の気のせいだろうか。



「ナツコ、お前さんはやらねぇのか?」
「い、嫌ですよう!似合わないもん」
「そんな事はねぇだろうよ」
「イゾウ隊長は似合いそうですよね」
「あぁン?」

 

器用に片眉をあげたイゾウ隊長は、何言ってんだコイツみたいな目で私を見やった。この視線でさえドキドキしてしまうのだから、女帝のポーズなんてされた日にゃ心臓が大爆発を起こし兼ねない。何個あっても足りない。



「野郎がした所で仕方ねぇよ」
「わかりませんよー?」
「まぁ、ナツコがそう言うなら試してやるよ」



ニッと唇を吊り上げたイゾウ隊長は、ツカツカとサッチ隊長に歩み寄ると徐ろに口を開いた。



「おいサッチ」
「あ?なんだよイゾウ」
「夕飯用の魚、食っちまったぜ」
「ちょ、イゾウ何してくれちゃっ…てん、の…」



着流しから見え隠れする綺麗なおみ足。
それをゆったりと広げたイゾウ隊長。

ググッと後ろに仰け反った体に、真っ直ぐ正面に伸びた腕。指は一本サッチ隊長を指して、発っせられた言葉。



「おれは何したって許されんだよ」
「…!」
「何故って?それはおれがイイ男だからさ」
「あ、うん。また釣ってくる」




フフンと鼻を鳴らす様に、決め台詞を言い切ったイゾウ隊長に誰もが開いた口が塞がらなかった。いやほんとに、確かにあのイゾウ隊長ならば何をされたって許してしまうかも…いや、許すわ。

見下しすぎて見上げるポーズなのだけど、反り返った白い喉笛が、イゾウ隊長が喋る度に艶かしく上下して、風に靡く着流しの裾からはスラリとした足がちらりと見え隠れ。チラリズム最強。
その証拠に呆気に取られながらも、サッチ隊長は咎める事無くいーのよいーのよと許してしまってるもの。
ほんのり顔が赤いのは…ひ、日焼けだよね?!



「おい」
「ん?あ、ラクヨウ隊長」
「イゾウの奴、メロメロの実食ったのか?」
「は?」



横からラクヨウ隊長が現れたかと思えば、突飛もない事を言い出して、むしろサッチ隊長より頬が赤く見えるんですけどなんなんですか。
そんな私達のやり取りを見ていたイゾウ隊長がこちらへと近付いてきて再び見下しすぎて見上げるポーズを決め始めた。



「おいラクヨウ」
「な、なんだよ」
「そいつに近づくな、穢れる」
「ひでぇ言いようだな…」
「おれは何を言っても許されんだよう」
「「…!」」



ススス、と。
先ほどのポーズよりもコツを掴んだのか(自己流かも)イゾウ隊長はラクヨウ隊長の胸板から顎のラインを、ピンと伸ばした人差し指で辿らせて、出ました決め台詞。



「何故なら、おれはイイ男だからねぇ…」



なぁ、そう思うだろう?
見下しすぎて見上げながらも、気だるげな視線を投げ掛けるイゾウ隊長の破壊力は抜群だ。現に遠巻きに見ていたサッチ隊長はゴロンゴロンと甲板を悶え転げているし、他のクルーは鼻血を吹きながら崩れ落ちている。
き、きっとこれは誰かが覇気を…!



「お、おれ…!」
「あン?」
「イゾウが男でも構わねぇかも…」
「「は?」」



はっとして声のした方に視線を戻せば、ほんのりどころか真っ赤に顔を染め上げたラクヨウ隊長がフルフルと体を震わせていた。



「ララララクヨウ隊長…?!」
「あ、愛があれば性別なんて関係ねぇよな?!」
「てめぇ、その目はヤメロ」
「ダメー!」



ジリジリ、ジリジリ。
ラクヨウ隊長が両手をわきわきさせながらにじり寄れば、負けじとイゾウ隊長は後退る。それを阻止すべく、私は二人の間に割り込んでイゾウ隊長にしがみついた。



「ナツコ、どけ!」
「ラクヨウ隊長のバカ!」
「おやナツコ、守ってくれんのかい?」



おれがイイ男だからか?なんて。
くつくつ笑いながらからかうように、
イゾウ隊長は私の耳元で呟くけれど。
イイ男だからってわけじゃない事は、誰よりもイゾウ隊長が一番よーくわかっている筈だ。



「イ、」
「ハッキリお言いよ、」
「イゾウ隊長は私のなんだからね!」



あーもー!心臓もだけれど、
顔まで大爆発しそうだコンチクショー!
はーはーと、恥ずかしさで鼻息が荒くなる私を抱き寄せて、イゾウ隊長は『よくできました』と囁いた。

そのまま私を横抱きにすると、
小さな口付けを落としながら
船内へと歩き出す。

後ろでラクヨウ隊長が打ちひしがれていたけれど、今の私たちには聞こえないのだ。とりあえず、何が言いたいかと言うと。イゾウ隊長の海賊女帝ごっこは最強だって話。


もちろんこの日から、
モビーでの海賊女帝ごっこは禁止となった。





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