作品3

□2014☆夏企画
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リクエスト内容
(男っぽすぎるとからかわれる?馬鹿にされる?彼女を(彼女は別に気にしてないがイゾウさんがおもしろがって)めちゃくちゃ別嬪で色っぽい女(花魁とかそんな感じ)に変身させるイゾウさん。
で、驚くみんなに一言ドヤ顔で
「こんないい女なのにそれに気づけないなんて勿体無いねぇor馬鹿だねぇ」)






どんな病も、奇跡のように治す××。

グランドラインにいれば、そんな噂は山ほど聞く。

その中でも信憑性の高い情報を集め、調べていくうちにナツコと出会った。
たった一人で人を捜していた彼女が、“一人より二人、仲間は多くて困るもんじゃねェ”というオヤジの言葉で家族に加わったのが数年前。

ナツコの得物は彼女の身長よりも大きなハンマーで、脂肪がほとんどない身体を使って繰り出す攻撃は、豪快だが正確。
敵だけを破壊していくナツコの戦闘は、見事としか言いようがない。

中性的な顔立ちと、ハスキーな声。
肌はもちろん、身体のラインもほとんど見せることがない服装をしていることから、女とは思えないと言われる事はよくあった。

顔だけは隠さないナツコだが、俺の隣に立ってると、どっちが女かわかりゃしないと家族は笑っていたな。

俺達は好みや考え方が似ていて、よく一緒にいた。
同じものを美味しいと食べ、同じものを綺麗だと見て、同じことで怒って、泣いて、笑って。

ずっと、この時が続けばいいと思っていた。

捜し人が見つかることを半ば諦めかけていたナツコが、ある日見張りでもないのに商船を見つけた。
その船は海賊に襲われていて、船を守る仕事をしていたであろう男は血を吐いて倒れかけていた。

ナツコは、弾丸のように飛び出して行き戦闘を開始した。

こんなことは、初めてだった。
いつだってナツコは、戦うか否かを聞いてから行動していたから。

血を吐いて死にかけていた男は、ナツコが捜していたその人だったのだ。

「よかったな、ナツコ」
「そうでもないです」

俺の言葉に、ナツコは静かに答えた。
男の吐血は怪我ではなく、ナツコの前から姿を消した理由だった。

「余命。長くて三ヶ月だそうです」
「医者の言うコトは当てにならんさ」
「ふふっ。後で船医に伝えておきますね」

数年かけて追いかけてきたナツコと残りの人生を過ごす事を選んだ男に、言われるがまま陸に上がることになったナツコ。
せっかくだとイゾウはナツコに化粧を施してやっている。
服だって、多少は女らしいものをと用意させた。

元々の素材がいいナツコは、磨いてみりゃ、粗暴な船の戦闘員から立派なレディってやつになった。

「ん。終わりだ。こんないい女なのにそれに気付けないなんて勿体無いねぇ」
「お世辞でも、嬉しいです。イゾウさん」

一緒に過ごした数年は、決して短いわけじゃない。
できた絆は、固いものだと思っている。

別れは、名残惜しい。

「世辞じゃないさ。もっと早くに気付いて口説いておけばよかったと思ってる」

心の底から、そう思う。
もし、俺が本気で口説いていたら。

ナツコは、どうしていただろうか。どちらを選んでいただろうか。

浮かんだ俺の疑問に答えるように、ナツコは躊躇いがちに口を開いた。

「マルコ隊長が連絡しろ、一人じゃ何かと大変だろうからすぐに迎えに来るって」

その眼には、うっすら涙が溜まってきている。

「イゾウさん。わがままですけど、もし、まだその時」

【君の幸せを願って、君のわがままは聞けない】

「もし、だと?俺らの迎えを待つんじゃねェよ。お前さんは、もう二度と、モビーに帰ってくるようなことはない。あいつと、陸で幸せになるんだ。医者の言う余命ってやつは忘れろ。やっと会えたんだ。先のことは考えんな」

やっぱり馬鹿な考えだと、俺は自分の想いに蓋をした。
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