作品3

□2014☆夏企画
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リクエスト内容〔現パロ、社会人同僚設定〕



【カナメ様、リクエストありがとうございます。】





「なんでこうなるのよっ」


成人を迎えて何年経った?
社会人になって何年経った?

その間、私はバリバリ仕事が出来るキャリアウーマンに、はたまたキラキラと周りが羨むような恋愛を、
両立してきた?

いいや、答えはノーだ

バリバリかはわからないが仕事しか、していない
まともな恋愛なんてしていない

最後に人に「好きだ」と言われたのはいつ?
「あなたが好きなの」と言ったのは、いつ?


笑えない

恋愛なんて、冗談やめて




【A角恋愛】




「…………」

「辛気臭ェ……」

「うるさい!放っておいて。あなたに私の気持ちはわからない」

「またそれか。イヤな口癖だねェ…」

くく、と小さく目の前の男は笑う
誰のせいでこんなっ!


「……ねぇ、イゾウ」

「あ?なんだい、チョコか?それなら其処にあんだろう」

「っ、違うわ」

「はぁ……じゃあ、コーヒーか?俺ァ行かねぇぞ。金ならくれてやるから自分で買ってきな」

「………………」




恋愛なんてしていない
だって、する相手がいないんだ


「って、なんであの人のお金でコーヒー買ってんのよ私…………はぁ」

まんまと乗せられた
今日も本当は定時で帰るつもりだった

だって、花の金曜日だから
花の金曜日だなんて、今では死語らしい
そんなこと、知ったこっちゃない

世代なんだ、若くはない


「はぁ……」

定時で帰ってたら、今ごろお風呂に入って缶ビールをあけて
1週間お疲れ様なんて、缶を高々上げていたはず

なのに、なのに、


まず、定時の鐘と共にデスクから即座に離れればよかった
もたもたしていた為、帰りのエレベーターラッシュで時間がかかってしまった
そうだこれだ

1週間の疲れが溜まっているとか、そんな足にムチを打ってでも階段で下ればよかった


「ようナツコ、もう帰んのか?イイご身分だな」

「え……」

「ちょっと来な」

「え!痛いっ、てかイゾウ、や、めて!離せっ」


離してくれる訳がなかった
エレベーター前でのやり取りを思い出せば、背筋にひんやり冷たい汗
そして鳥肌ひとつに身震いをプラスした


溜め息しか出ない



「遅かったな」

「コーヒーくらいゆっくり選ばせて」


デスクに戻り缶のプルタブを開けた
家か会社かってだけで、缶の中身が違うのだから嫌になる

イゾウに無理矢理押し付けられた書類の端をグシャ、と握れば「おいおい、勘弁してくれ」と隣でまた小さく笑われた



「イゾウって、暇なの?」

「俺が?」

「だっていつもいつも、残業しているでしょ。帰ってもやる事ないの?」

「抱いてやろうか」

「ほらやっぱり暇なん……………………は?」

「くくっ、聞こえなかったのかい?耳まで悪くなりゃオシマイだな」

「なっ!からかわないで、そんな冗談……面白くないわ」

「別にお前さんをからかうほど、俺ァ暇じゃねぇよ。でもまぁ………その時間の使い方は悪くねェかもな」

「…今日は随分、饒舌なのね」


何を言ってるの、この人は
人を馬鹿にしているとしか思えない

そんな冗談に付き合ってる暇なんて、これ程にもないくせに

何を慌てているの、私は



「お前さんは、目先の色恋に疎いんだよ」

「はい?」

「もっと目を凝らせば、見えていない…くくっ、死角の恋ってのも解るかもな」

「……そんな含み笑いで言われても…てか、イゾウの口から恋とか出るなんてびっくり」


そう
この人は、色恋に興味がないと思ってた

この会社に入って、ずっと同じ課で仕事をしてきた
同僚にしては、ずば抜けて仕事が出来て、この女性にも負けない綺麗さで人気もある

格好いいけれど、イゾウには美しいって言葉の方が似合うんだ

だからいつも隣にいて、それが凄く恥ずかしかった

それでも私なんかの隣を歩くのは、同僚だからの甘えを乗せていた
いくら女性社員に言い寄られても、興味なさげに笑うだけ

肯定も否定もしなくて、イゾウは周りの男性社員とは違っている


見えない、死角の恋があるだなんて
この人の口から出る言葉とは思えない

そんなA角みたいな
自ら一歩踏み出して、覗いてみなければ解らない恋をするほど
私は器用じゃないんだ


「ねぇ、イゾウ」

「なんだ」

「死角の恋を見ようと思う」

「成長したか」

「まだ……ね」

「まだ?」

「自分から一歩踏み出すのは恐いから、だったらそっちから仕掛けてよ、私の扱いは……解るでしょう」


最大の我儘と、期待を少し


イゾウは今日何度目かの、小さく笑った
口角だけを上げる、初めてみる

男の色気を含んだ笑い


「なぁ」


グイッと手首を引かれれば、隣に座っていただけの距離は近くなる
イゾウのシャツと、緩められたネクタイが視界に入れば
耳元で、くすぐったい息と混ざって低く甘い声が

私を途端に熱に埋める



「何を言って欲しいんだ?」

「だ、から……っ。す、好きって言いなよっ、ん」


クツクツ笑う声だけが耳を支配して
周りの音はシャットダウン



「今際の際に言ってやる」



死角だった恋愛は
想像以上に深く甘過ぎるものだった






【この命、果てる時に言ってやる】
【お前さんだけ、好きだったとな】





有名な言葉を借りました
拝読ありがとうございました。

まい
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