作品3
□2014☆夏企画
14ページ/26ページ
リクエスト内容
〔イゾウさんの壁ドン〕
可愛いとかキレイになったと、最近よく言われるようになった。
家族にだけど。
でも、千人以上いる家族だから、気のせいじゃなくて変わったはずだよね?
褒められれば嬉しいから、私も素直に、ニッコリ笑ってお礼を言う。
「ありがとー!サッチ兄」
「おう。うまくいくといいな」
サッチ兄に相談ついでにお手伝いして、頑張ったご褒美に貰ったお菓子。
それにウキウキしながら船内を歩いていたら、イゾウさんを見つけた。
大好きなイゾウさん。
最近、なぜか冷たくて、あまり笑ってもくれない。
声をかけて、また冷たくされたらどうしよう。
直してもたいして変わらない前髪を直して、迷って、それからやっぱり声をかけた。
「イゾウさん!」
「ああ。……なんだ、また貰ったのか」
すごく、呆れた感じのイゾウさん。
前は良かったなって笑ってくれたのに。
「ハッ。皆にちやほやされて、お気楽なこって」
それは、本当に突き放すような言い方で。
前はいつでも隣にいてくれたのに。
何でも一緒に分かち合ってたのに。
「なんで、何でそんな言い方っ。何がそんなに」
私の中に溜まってた不満が爆発した。
ドンッ
と、耳の近くで大きな音。
顔の横にはイゾウさんの腕が伸びていて、壁を殴ったのかも。
不満を爆発させたのは私だけじゃなかったみたい。
冷静に分析する反面、長いまつ毛、薄っすら施された異国の化粧、鋭い眼差しが、鼻と鼻が触れそうなくらい近くにあって、私は息をするのも忘れてた。
「黙りな。何が面白くないかって?ナツコには関係ない。……馬鹿みてぇに誰にでも愛想良くしてるナツコが、面白くねぇって言ったら?お前どうするんだ?」
意地悪に言うだけ言うと、イゾウさんは離れて、腕を組んで舌打ちをした。
同時に、さっき相談して来たサッチ兄のアドバイスを思い出した。
『ナツコ。恋は当たって砕けるもんだ』
それはサッチ兄だけだと笑ったけど。
わけわかんないイゾウさんに対して、なんだか頭に来てた私は勢いだけで行動した。
ドカッと仁王立ちしてたイゾウさんの脚の間に蹴りひとつ。
可愛いと言われる笑顔は何処へやら、背の高いイゾウさんを睨みあげて
「はぁ?わけわかんない。誰にでもって、家族だからじゃん」
わしっとイゾウさんの襟を掴んで、唇をキスをした。
勢いからして、ほとんど頭突きだけど。
「こういうしたいのはイゾウさんだけだし!」
【吃驚したか、ざまあみろ!】
と吼えて自分がやらかしたことをジワジワ後悔し始める私をよそに、そっと頬に手を添えてくるイゾウさん。
「ったく。ナツコ、キスってのはこうすんだよ」
そしてゆっくりと。