作品2

□HAPPY BIRTHDAY
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10月13日という日を私は好きではない。
甲板には賑やかな宴の音。
ワイワイと騒ぎ、隊を越えて此処にいる皆が楽しそうだ。
そんな様子を甲板の壁に凭れて眺めた。
手中にあるグラスの中身がカランと揺れる。
酔いが回ったのかもしれない。
預けた背中を起こそうとすれば、隣には甘い匂いと共に人影。
「あ」
夜でも栄える薄紫を纏う人物に、私が口を開こうとしたさなか。
「めでてぇな、お前の誕生日だ」
きゅっと噛み締めた下唇が白くなる。
真っ暗な夜がこんなに賑やかでキラキラしているのは私ではなく貴方の祝いのためなのに。
誰も私の誕生日など知らないはずなのに。
「隊長の、誕生日ですよ」
「そうか。なら同じ日のお前ももちろん、誕生日だろう」
今日初めての【おめでとう】



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