02/24の日記

00:11
小ネタ;告げた日
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直接編(会話文を通り越してしまいました…^ ^;;)



* * * * * *



「あのな」
「はい」
「みりおには言っとこうと思って」
「なぁに?」
「大劇場が終わったら、発表する」
「……」


ソファに隣り合って座って。それまで、あたしの肩にゆったりと頭をもたせ掛け、可愛く甘えていた恋人が。瞬間、身体を硬直させたのが判った。


主語抜きの会話でも、あたしの言葉の意味を察してくれたらしい。


あたしの五感を、その香りや柔らかさで甘く刺激していた髪がさらさらと動き、彼女が顔を上げたのが伝わってきたから。あたしもそちらを見た。


合った眼は掬ってあげたい程潤んでて、唇は小刻みに震えていた。一度きつく噛み締めたそれを、小さく開けて、彼女の喉から絞り出したような声が聞こえてきた。


「…―どうし…て?」
「‘今や’と思ったんよ。それだけ。みりおにも、いつかその時が来たら解るわ」
「…私…も……―」
「―言うと思ったわ。それはあかんよ、絶対に」
「何で!…ッ!!」
「考えてみ、あたしが辞めたらトップオブトップはあんたになるんやで。こー云うのは就任順や。学年やない。解ってるよな?」
「…」
「なら、その務めを果たしてからにしなさい。あたしをガッカリさせんといて」
「…酷い」
「何が。あたしは、此処で必要だった何もかもをあんたと一緒に経験してきた。みりおに分け合うてないものなんか一つもない。だから、出来るよな?」
「…それだって何だって、真咲さんが居てくれたからです。まさきさんの背中が見えなきゃ、私は―……」


そう言って彼女は少し勢いを付けたようにあたしから体を離し、俯いた。その声はくぐもって、ついには聞こえなくなってしまった。


「………」


正直、これ以上掛ける言葉を持たなかったあたしは、暫く正面を向いていた。


少し経って横を窺うと、みりおが両手で顔を覆っているのが見えた。しゃくり上げるのを、必死で堪えているかの様にも見える。


思わず肩を抱いて頬を寄せ、呟いた。


「まだ、来年後半の話やで」
「……っっ」
「何も、変わらんよ。連絡もする」
「〜〜〜…」
「TCAでの共演が間に合わなかった事だけが、残念やな。そや、その代わりにみりおと何かやりたいって、劇団に言ってみよかな」
「……――」
「ワガママ言い放題やったあたしの、最後の大我が儘や、あはは…」
「…」


未だ両手を顔から外さないみりおは、こんな時でも自分の感情を押し殺すことを第一としている。


―こういう所にまず、惹かれたんやったかな……随分昔のことなんで、もう上手く思い出せない。



あたしと真逆なその性格に、最初はイラついていた事もあったと思う。



『解らんよ、みりおの考えてること! もっと自分の感情を出してや!』



―今思えば無茶言うたよなぁ…それってあたしに、思い付いた事やすぐ動くこと、それらを抑えろって言うてんのと同じやもんな…――うん、無理やわ。


その内に、それを貫けるこの子に却って興味を引かれて、実は頑固な所を‘面白い’と思い始めて……


気が付いたらその手を取りたくなってた。隣に置いておきたくなった。その頃から、みりおのあたしに向けられる笑顔が少しずつ増えていって。想ってることや感じたことを、懸命に伝えてきてくれるようになって。


あとはもう、抱き締めるしかなかった。



「まさ…きさん」


これ以上何も言ってはいけないのだと悟ったらしい彼女が、自分の顔から手を外し、あたしの腕に縋り付いて、額を押し付けてきた。


「…」


今も昔も大好きな、そのぽっこりと丸い頭を、サラサラと髪に手を通しながら何度も撫でる。



そうして心の中だけで、永遠の愛を告げる。



『変わらんよ、あたし達は。

あたしの性分はよく解ってるみりおだと思うけど、あたしは、新しい世界ではもう決して、後ろは振り返らへん。


だから、当分の間二人の住む世界は、全く違うものになってしまうかもしれんのやけど。


でもな、どんな世界ででも……又二人が、出会えたら、さ。


絶対に、お互いが選ぶのは又、お互いだと思わん?』




どうかどうか、伝わっていますように―――



* * * * * *


直接編としたのは、正式に決心した後どうしてもスケジュールが合わず、取り敢えずTELで一言言っておいた可能性もあるかな…と考えたのもあったのですが。

例え極僅かなニアミスを利用してでも、m咲さんは絶対直接伝えてる気がしてきました…。

雨月

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