天から舞い降りた小鳥

□5.5話 雪の中の詩人4
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話しに夢中になって結構な時間が経っていたが、隣にいるたかみなは飽きもせずに俺の話を真剣に聞いている。



……いや、ニヤニヤと不適な笑みを浮かべながら聞いていた。



「残念だったね、キス止められちゃって」



たかみなは嫌なところにツッコミをいれてくる。

そしてその顔が非常に憎らしい。



『その顔やめろ』

「えー、何で何で」

『気持ち悪いぞ、不快だ』

「ちょ、それマジな悪口!」



たかみなはからかうと面白い。

反応が新鮮で飽きないやつだ。



「ちゅりとの初デートは楽しかった?」



たかみなはわざわざ意地悪な表情に戻って聞いてくる。



『楽しかったよ、最後がなければな』

「最後って……」



最後にベランダで明音と話したこと。

明音にとって答えにくい質問をしてしまったこと。



「"また会えるか"ってやつね」

『あぁ、今思うと明音は明音なりに、悩んで苦しんで、それでも俺の為に笑顔でいてくれたんだよな』

「ちゅりの最後の優しさのつもりだったんだと思うよ」



俺の質問に一瞬だけ曇った表情をした明音。

すぐに笑顔を作って俺に答えてくれた優しさ。

そんな儚い優しさに、俺は気づいてやれなかったのが悔やまれる。

何も考えずに、自分の思いだけであんなことを言ってしまった自分が憎い。



「だいぶいいとこまで話してくれたね。最初の出会った時の話と違って、ちゅりとのデートなんかを話すのはやっぱり嬉しそうだね」

『……そうかもな、一つ一つが大切な時間だったからな』



俺は軽く微笑んで素直に答えた。



「雄吾がそんな顔するなんて珍しい」



自分ではどういう表情をしているか分からない。

たかみなの口ぶりからするとよっぽど珍しいのだろう。



「そんな優しい表情、私には見せたことなかったよ」

『今見たじゃねぇか』

「もー、またそうやって言う。でも雄吾が本当にちゅりのこと好きだったのが伝わってくるよ」

『今でも好きなんだけどな』



たかみなの表情が少しだけ曇る。



この想いが伝わることはない。

既に伝わっていたことを願うしか俺には出来ない。



明音と会って何かを話したい訳ではない。

今会ってもきっといつもと何も変わらない、他愛もない会話をすることだろう。

ただ明音の傍にいたい、そう思う。



「こうやって聞いてると、雄吾は本当に幸せだったんだな、って思った」

『そうだろ?』

「うん、雄吾だけじゃなくて、きっとちゅりも幸せだったよね」

『きっとそう思ってくれてるはずだよ』



俺は明音の笑顔を思い出す。

俺と一緒にいて満面の笑みを浮かべて、一緒に馬鹿ばかりやっていた明音の顔を。



「うん、やっぱり良い顔だ」



たかみなは何かを納得したように声を出した。

俺の表情も明音の笑顔につられて笑顔になっているのだろう。



「さぁ、そろそろ次を話してよ。こっからは絆が深まる大事な時間だったよね」



明音との絆を深める大事な時間。

人生で一番充実していた時間とも思われる時間だ。
 
 

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