天から舞い降りた小鳥

□3.5話 雪の中の詩人3
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道路を見ると微かにではあるが雪が積もってきている。

十一月だというのに珍しいくらいの寒波だ。



たかみなは何故だか、話を途中まで終えた俺を睨みつけている。



『な、なんだよ……』

「あんなに駄目って言ったのに、裏ではそんなことしてたんだ」

『裏?』

「あいりんのこと」



俺がたかみなには内緒で愛李と番号交換をしたことを怒っているようだった。

しかしその愛李がいなければ今の俺はない。



『知らなかったのか?』

「知らないよー、まったくあいりんったら……」

『まぁいいじゃねーか。愛李は別に悪くないんじゃないか』

「何でよ、あいりんがあんなとこで聞き耳立ててなければ、こんな最悪な結果には……」

『最悪じゃないよ、さっきも言っただろ"俺は幸せだった"って』



俺が笑顔でたかみなの言葉を遮ると、怒っていたたかみなもつられて笑顔になった。



「そうだよね"幸せだった"って言ってくれたんだもんね」



俺の想いが届いたようで、何だか嬉しかった。



「それにしても雄吾、結構一途なんだね?」

『一途?そうか?』

「だってちゅりに会いたい一心で、劇場まで追ってきたんでしょ?まるで恋の病みたいだね、何か可愛い」

『恋の病とはまた別だと思うが』

「まぁまぁ、そう照れるなって」



ガールズトークのようなノリで話すたかみな。

たかみながコイバナをしていても、まったく似合っていないのが残念なところだ。



「会いたくても会えない、会えると分かったらその日の内に劇場へ……あぁ、なんか一途でいいなぁ」



舞台女優のように、大きく手を広げながら、たかみなは天を仰いでいる。

自分のことなのだが、聞いてるこっちまで恥ずかしくなってくる。

確かにあの行動力は自分でも信じられない。

自分で言うのも何だが、普段はどちらかと言うと無気力というか、いい加減だ。

思い立ったら即行動なんてあり得ない。

あの頃の俺は、それほどまでに明音のことが気になっていたのだろう。



「あぁ、私も燃えるような恋がしたい」

『たかみなは無理だろ、色々と立場的にも』

「ちょっとちょっと、夢見るのは自由じゃんか」

『じゃあ夢だけにしとけよ、ついでにたかみなが恋とか言うとちょっと気持ち悪いぞ』

「ちょっと待てーい!それは言い過ぎやろ!」

『それに今の俺の話を聞いて、恋がしたいなんて思える感受性自体が残念だな。だいたいこの時点では明音と俺は恋仲なんて考えも……』

「みなまで言うな、みなまで言うな。私はこの後のあまーい展開を知ってるからこそ言ってるんじゃないッスか」

『……あまーい展開ねぇ』


俺は半ば呆れながら、たかみなの言う"甘い展開"について話を続ける。
 
 

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