チョコの奴隷
□4話 甘くてほろ苦い
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扉が開くその動作がスローモーションに思える。
ゆっくりと開かれていく扉を見て、いよいよその時かと思うと胸が張り裂けてしまいそうだった。
「お疲れ、貰えなかったでしょ?」
入ってきたのは俺が予想していた人とは違い、珠理奈だった。
『何だお前か……紛らわしいことすんなよ』
「えへへ、何か気になっちゃって」
玲奈先輩の話をしている時は拗ねてたり不機嫌だったりしたけれど、何だかんだで珠理奈も気にしてくれていたみたいだ。
「その感じからすると、やっぱり貰っていないみたいだね」
『何で貰えないのが前提みたいになってんだよ』
「だって玲奈ちゃん、先帰っちゃったよ」
『は?』
よく聞こえなかった。
玲奈先輩が何だって?
聞き間違いだと信じたい、玲奈先輩は帰ったと聞こえたんだが。
『お前、今何て?』
「玲奈ちゃん、先に帰っちゃったよ」
再び聞いても答えは同じだった。
しかし俺にそれほど動揺はなかった。
玲奈先輩への気持ちの整理が出来ていないこともあってか、逆に安堵する。
やはり俺には玲奈先輩の気持ちに応えることは出来ない。
「あはは、うそうそ冗談だって」
急に珠理奈が笑い出した。
『冗談?』
「玲奈ちゃんが帰ったなんて嘘だよ、そんなショック受けなくていいのに」
そんなにショックを受けた訳ではなかったが、珠理奈の目には違う俺が映ったみたいだ。
冗談だと言われたことで、やっぱり玲奈先輩に会うんだと思うとまたしても気持ちが高ぶってきた。
『……お前なぁ、言っていい冗談と悪い冗談があるだろ』
「貰える自身があるならこんな嘘に惑わされないでよ」
嘘で良かったのかどうかは分からない。
玲奈先輩が帰ったと聞いて、悲しかったのか喜んでいたのか、自分でも分からなくなってきた。
どちらにしても玲奈先輩は約束を破るような人じゃないだろう。
『ところでお前はそんな嘘を言いにきたのかよ、そろそろ玲奈先輩が来るから早く帰れ』
俺は珠理奈を部室から追い出すように手を振った。
「はいはい、分かりましたよ、っと」
そう言って珠理奈が部室から出ていこうとすると、部室のドアが開いた。