チョコの奴隷
□2話 少しだけ特別な朝
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携帯から朝を告げる音楽が電子的に鳴り響く。
俺は寝ぼけたままその携帯を手に取り、手馴れたように操作をする。
「……朝か」
二月十四日という特別な日。
しかし朝の行動はいつもと変わらない。
いや、今日は一つだけいつもと違う行動がある。
念には念を入れておく必要があるのだ。
俺は学校への準備を手早く進めて家を出た。
天気は快晴、絶好のバレンタイン日和。
まるで俺の気持ちを映しているかのように晴れている。
「おはよう」
後ろから声をかけられる。
登校する道のいつも同じ場所で出会う幼馴染に、俺も挨拶を返した。
「ちゃんと寝れた?ドキドキして寝れなかったんじゃないの?」
『そんな子どもじゃねぇって』
実際には少し緊張して寝れなかったけど、それを言うと珠理奈は面白がって冷やかしてくることが容易に想像出来たので、俺は何も言わなかった。
「あれ?今日何か良い匂いするね」
『そうか?いつもと変わんないけどな』
「気合入れて香水か何かつけてる?」
自慢じゃないがそんなもの持っていない。
それでも香りがするのか、珠理奈は俺の髪の毛に鼻を近づける。
「違うな……これはシャンプーの香りかな」
珠理奈は犬のように鼻を利かせ、的確に当てる。
風呂に入ったからきっとその匂いであろう。
それにしてもいつもの俺と違うだなんてよく分かるな。
『たぶんシャンプーの香りだろ、風呂に入ってきたから』
「え、どうしたの、雄吾が朝入るなんて」
『別にどうしたもこうしたもねぇよ……ただ、何となくだよ』
「えー怪しいな、念の為身体を清潔に……なんてエッチなこと考えてたんじゃないの?」
図星だった。
珠理奈の言っていることが当たっている為、俺は何も言えなくなる。
「え?もしかして当たってた?」
『朝からうるせぇな、別にいいじゃねぇか、期待するのはタダなんだから』
「あーあ、男ってどうしてこう単純なんだろ」
それは俺も思っている、なんで男はこうも単純な生き物なのだろうか。
そしてその限られた思考の中でも性への欲求は特に高い。