チョコの奴隷

□1話 憧れの人と幼馴染
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俺の手を離れたボールが綺麗な放物線を描いてゴールに吸い込まれる。

ボールは網に触れる微かな音を奏で、体育館の床に落ちた。

ボールが床の上で数回バウンドしていると、紅白戦の終了を告げるブザーが体育館一杯に鳴り響いた。



『ふぅ、入って良かった』



安堵から思わずため息が漏れる。

この紅白戦はレギュラーを決めるのに重要な位置付けだ。

部内の紅白戦と言えど、俺も含めて皆真剣だった。



「さすが我がバスケ部のエースだな」



俺に声をかけてきたのはバスケ部のキャプテンだった。



『おだてても何も出ませんよ』

「何言ってんだよ、一年の時からずっとレギュラーはってるくせに」



キャプテンの言う通り、俺は入部してからずっとレギュラーだった。

俺が部活に精を出す理由は二つある。

一つは当然、純粋にバスケットが好きなこと。

もう一つの理由は……。



「はい、お疲れ様」

『あ、玲奈先輩。ありがとうございます』



俺が部活に精を出すもう一つの理由がこの人。

バスケ部のマネージャー、松井玲奈がいるからだ。

俺は玲奈先輩から受け取ったタオルで額を伝う汗を拭う。



「最後のスリーポイント、凄かったね」

『見ていてくれたんですか!?』



玲奈先輩が見ていてくれたことで、俺は興奮気味に話す。

ここで”あなたの為に決めたかった”なんて言えたらいいのかもしれない。

……いや、逆にイタイ奴になってしまいそうだ。

しかも紅白戦だしな。



「ちゃんと見てるよ、マネージャーだもん」



そういって、玲奈先輩は自慢気に胸を張る。

胸を張ることで、体操着に身を包んだ玲奈先輩の身体のラインが露になった。

細く華奢な身体に、女性らしい膨らみ。

俺はその姿を見て鼓動が少し早くなる。



「マネージャーたるもの、全員のプレーをちゃんと見ないとね」

『そ、そうですよね』



何だ、見ていたのは俺だけじゃないのか。

一瞬でも喜んでしまった自分が情けなくなった。



「ちゃんと汗を拭いて、しっかりクールダウンしてね」



玲奈先輩は俺に一言残すと、他の部員にもタオルを渡しに行ってしまった。
 
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