short dream

□ムカつく存在
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物心ついた時には隣にアイツがいた。

家が隣同士で家族ぐるみのお付き合い。
幼少時は双子のようにいつも一緒にいた。
自分が女でアイツが男なんて気にする事もなく、一緒に転げ回って遊び、お互いの家に泊まりに行っては一緒にお風呂に入り、1つの布団に一緒に寝た事も数えきれないほどある。

小学校に入って野球を始めたアイツはメキメキと上達して、地元ではちょっとした有名人になった。
そうなると一緒に遊ぶ時間も少なくなり、子供心にも何となく男女というものを感じるようになる。
私よりチビなのに勉強も出来て野球も出来るから同じ学校の女子にもモテ始める。
それでも小学校の間はアイツもうちに遊びに来ることもあり、少ない時間ながらも一緒に過ごせばジャレ合っていた気がする。
そんな時、うちの母親が見せてくれた某人気野球アニメ。

『幼馴染み』
『野球』
『かずや』

そのアニメの主要キャラの設定と3つも揃ってる事もあり、二人でよく観ていた。
まだまだ無邪気で純粋だった私はそのアニメのヒロインの真似して「カッチャン、△△△を甲子園へ連れてって!」と言った事もあった。
その瞬間、アイツは大爆笑した。

「南ちゃんの方がおっぱいデカくて可愛いし!」

子供心に傷ついた。
いや、今思えばまだ10歳そこそこの子供が高校生並みにおっぱいが大きかったらソレはソレでかなり大変な問題だ。
だから傷つく事自体可笑しな話だが、やはりその頃の純粋な私は結構本気で傷ついた。

その後くらいから私はアイツと距離を置くようになった。
そうするとクラスで一番可愛い女子や隣のクラスの可愛くて有名な女子など、とにかく女の子達がこぞってアイツに近づいていった。
私達はどんどん交友関係が変わり、アイツが出る野球観戦もいかなくなった。
なのにアイツは何とも思ってないのか、いつも通り野球に夢中で、女の子が周りで蔓延っていてもいつも通りヘラヘラ笑っている。
そこには初めから私の存在なんてなくても関係ないような……そんな気さえした。

中学の頃には学校や家の近所で会ってもほとんど話さなくなった。
相変わらずのヘラヘラした態度。
毎日、学校と野球と家事でクタクタになってるハズなのにそんなのを感じさせない態度が気に食わなかった。
会話が減ったとはいえ幼馴染みなのに、私にすら弱音を吐かない。
その頃からアイツはムカつく存在となった。
学校でのアイツは相変わらず女子にモテた。
勉強なんてする暇もなさそうなのに成績は私より格段にいいし、シニアでの活躍ぶりはかなり有名で野球の強豪校のスカウトが見に来るという噂もあるほどだ。

でも何より女子を惹き付けたのが、その外見。
所謂イケメンらしいが、私のムカつきフィルターにかかるとニヤケた野郎だ。
クソッ!眼鏡野郎め!!
自分でもモテる事を自覚してる所もムカつく!!!
こんなイケメンと言われるアイツが物心ついた時からずっと隣にいたんだ。
「男は顔じゃない!」と思っていてもアイツのせいで目が肥えていた。

でも
何よりもムカつくのはあの笑顔。

いつも笑っているけど昔の笑顔とは違う。
偽物の笑顔を貼り付けるようになったのはいつからなのか。
昔のアイツは良くも悪くも素直すぎたのに。
今は大事な本音を隠すように偽物の笑顔で笑ってる。

それが最大のムカつきの原因だった。

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