BW マリオネット

□決戦、そして…
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プラズマ団…もとい、N・ゲーチスとの戦いを終えてから暫く。
チェレンは旅を終え、カノコタウンへ帰ってきていた。
「チェレンーっ!」
カノコタウンに足を踏み入れようとした矢先、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると此方に走ってくる2つの人影が見えた。
「おかえりなさい。見違えるように大きくなったわね。」
「おかえり!連絡貰ってからチェレンが帰ってくるの、首を長ぁくして待ってたんだぁ!」
にこりと微笑むアララギと頬を真っ赤に染めて顔一杯に笑うベルに声をかけられ、チェレンも笑みを浮かべた。
そんなほのぼのとした光景の中にもしかし、ひとつの違和感があった。
それを誰も口に出さないのは空気を重くすることを避けてか現実を直視することを避けて、か…。
プラズマ団との戦いが幕を閉じて間もなく、端から見ても落ち着きを欠いていたトウヤは「Nを探してくる」とだけ言い置いてカノコタウンを飛び出した。
前まではライブキャスターで連絡が取れていたが、ここ2ヶ月、トウヤは全くの音信不通になっていた。
もともと向こうから通信してくることは少なかったものの、此方から通信すれば連絡は取れた。
だが、それさえも無くなっていたのだ。
あいつは強いから大丈夫だと口では言いながら、皆、彼がまた何かに巻き込まれているかもしれないという不安を拭いされないでいた。
「…ねぇ、それでさぁ、チェレン……」
ベルがいきなり態度を変え、おずおずと問いかける。
「なに?」
「トウヤとは…連絡取れた?」
「……いや、相変わらずだ。本当にあいつ、何処で何してるんだよ…っ」
ぶつけ処の無い怒り。
それは単に、状況の知れないトウヤに対しての怒りだけでは無かった。
(僕は、何の為に強くなったんだ…)
自分の無力さに対して苛立ちは募り続ける。
ダンッと音を立てて何にも罪の無い壁を殴り付けた。
「トウヤ達を守れるように…強くなるんじゃ無かったのか…っ」
呻くように絞り出された声は、悲痛に空気を震わせる。
苛立ち・怒りとは逆に空気はスゥッと冷気を帯びていくようだった。
アララギとベルも、居たたまれない思いでチェレンを見、何処に居るのかも分からないトウヤを思った。
(トウヤ…チェレンが帰ってきたんだよ。また3人で揃って遊ぼうよ…。)
ベルは、指先が白くなる程に強く手を握りしめた。
彼についての手がかりは、未だ何も無い…。
 

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