long dream@
□左京のゲーム
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「チ…ふざけた野郎だ」
ただでさえ先程から機嫌が悪かった飛影が舌打ちする。
(左京…何を考えている?)
蔵馬も突然の左京の提案に、眉をひそめる。
「ゲームをする、だとォ…!?そんなもん未来がやる必要ねーよ!」
「敵にスパイなんかおくんなくてもオレたちは勝てるぜ!」
幽助と桑原が大声で左京に噛みついた。
「桑原くん…君には特に仲のよいお友達が三人いたね」
左京が意味ありげに笑って言った。
友人の話を持ち出され、嫌な予感がした桑原の顔色が変わる。
「もしかして、桐島くんたちのこと…?」
「未来もアイツらに会ってたのか」
「うん。桑ちゃんとメガリカのCD買った時に」
幽助にうなずく未来。
嫌な予感がしているのは、桑原だけでなく二人も同じだった。
「未来さんがゲームに勝った場合は、浦飯チームの準決勝での対戦相手チームに事前に潜入する権利を彼女に与えると言ったね。だが負けた場合もそれなりの代償を払ってもらう」
左京の次の言葉に緊張し、未来は生唾を飲み込む。
「賭けるものは桐島くん、大久保くん、沢村くん…この三人の命だ」
「なっ…!」
騒然とする浦飯チームの一同。
「ゲームの参加を断った場合、負けた場合はその瞬間に三人に使い魔が送られる」
さらりと何でもないことのように左京は述べると、次いで彼は蔵馬に語りかける。
「この発想は蔵馬くん。君と呂屠との試合から思いつかせてもらったよ。今回は母親が人質でないだけましだろう?」
そう言った左京を、ひどく気分が悪くなった蔵馬はギリ、と睨みつけた。
「くそっ…」
この島から皿屋敷市まではかなりの距離がある。
仲間を助けることもできず、悔しさに拳を握る桑原。
あまりに強く握ったため、爪により掌から血がにじみ出ていた。
「桑ちゃん、ごめん…」
「未来ちゃんのせいじゃねーよ」
自分のせいで桑原や彼の大切な友人を巻き込んでしまい、未来は申し訳なくてたまらなかった。
「胸くそ悪くなってくるだ!オメーら本部はどんだけ汚ねェ手使えば気がすむんだべ!?」
陣が抑えきれない怒りを隠そうともせず叫ぶ。
大会本部の未来の扱い方、卑怯なやり方…何もかも陣には許せなかった。
「君と浦飯くんの試合を引き分けにしたり、飛影くんたちを閉じ込めたのはすべて君のチームのオーナー、豚尻が仕組んだことだよ。彼にはもう死んでもらった」
自分は豚尻とは違う。
美学まで失ったつもりはない。
そう左京は主張する。
「ただ、より観客や自分が楽しむために、未来さんにも戦ってほしいだけだ。三人を人質にしたことは、そのための手段にすぎない」
幾度も自分の命を賭けの対象にしたことのある左京には、三人の命を賭けさせることなどに何の躊躇もなかった。
「おい、勝手に話を進めてやがるがな」
左京に向かって口を開いたのは飛影だ。
「未来には戦いなど無理だ。代わりにオレがやってやる」
「私はあくまでも未来さんに戦ってほしいんだ。それに戦闘力のない彼女に配慮して、暴力的要素はないゲームをこれから提案するつもりだ」
飛影や他のメンバーが戦っても意味はない。
どんな形であれ、左京は未来が戦うことを望んでいるのだ。
「フフフ…まあひとまず対戦相手に登場してもらおうか」
左京が合図すると、闘技場にある選手入場の門から一つの小さな影が見えた。