long dream@
□嵐の空中戦
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「…10!勝者浦飯!」
カウントをとっていた小兎の前を素通りし、幽助はリングに背をあずけている蔵馬と未来のところへやって来た。
「幽助、ありがとう!スッキリしちゃった」
散々蔵馬を痛めつけた爆拳を気持ちよく倒してくれた幽助に、やっと泣き止んだ未来が礼を言う。
「ああ。まだオレは怒りがおさまってねーがな。蔵馬、大丈夫か」
「すまないな…予定では三人はオレで倒したかったが…」
「ケガはどうなんだ?」
だいぶ血は止まっていたが、蔵馬の体に痛々しい傷跡は残ったままだ。
「ケガよりも自分で植えたシマネキ草が厄介だな。魔界の植物だけに枯らすのに時間と妖力がかかる」
蔵馬の身体にまとわりつくシマネキ草は、見ているだけでこちらが痛くなってくるほどだ。
「だがさっき未来に妖力を上げてもらったから、普通よりも短い時間で枯れるだろう」
未来が蔵馬の妖力を上げることで、シマネキ草を早く枯らすことができるというわけだ。
「まさに自分でまいたタネだけどね」
こんな時でもうまいこと言う蔵馬である。
「ゆっくり休んでていいぜ。残り二人もオレがきっちりカタはめる」
親指を立てる幽助。
「幽助、頼りにしてるよ。頑張って!今戦えるのは幽助しかいないんだから」
「まかせとけ!」
未来の応援に、幽助はドンッと自分の胸を叩いた。
「油断だけはするなよ。前の三人は出てくる順番も強さもバラバラだった」
蔵馬は自分が戦った相手である、かなり強かった凍矢、けっこう強かった画魔、論外の爆拳を頭に浮かべる。
「後の二人は確実に大将クラスだ」
「陣と吏将か…」
自分の隣で倒れている爆拳を気にもとめていない陣と、いまだ黒マントを羽織ったままである吏将に未来は目を向ける。
未来は彼らと会話したことはあったが、その強さは未知だった。
「どんな奴が相手だろーが、負ける気はしねー!」
幽助は陣と吏将をキッと睨み付ける。
「次の試合を始めます!」
小兎の合図でリングに上がった幽助に対するは…。
「陣だ!陣がやっと出てきたぜー!」
「陣が出りゃこっちのもんだァー!」
期待の星、風使い陣の登場にわき上がる会場。
「陣!浦飯をやっちまえー!」
「殺せ!殺せ!殺せ!…」
「うるせえなや。やりたけりゃ自分でやれっちゃ」
観客席を見渡し、陣がうっとおしそうに言う。
(とうとう陣がくる…!)
かなりの力を秘めているであろう陣に、未来は気持ちが身構える。
未来にとって幽助は仲間で、陣は敵。
(ちょっと前には、同じマントに入ってたのになあ)
こうして敵として向かい合う陣を見ると、彼と共に空に浮かんだことが遠い昔のように思える未来だった。