long dream@
□罠
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「桑原は今回はとても戦えねェ。オレたち4人でなんとか戦わなきゃな」
イチガキ戦で重傷を負った桑原を見、幽助が蔵馬、飛影、覆面に呼びかけた。
(戦えないのは彼だけじゃない)
イチガキ戦で霊力をかなり消費した覆面と、右腕がネックの飛影に気づいていた蔵馬。
(未来がいてくれれば覆面の霊力を回復させることができたが…)
幽助と自分だけで一戦をのりきることを、蔵馬は覚悟する。
「誰が行く?最初に戦いたい奴が代表でいい」
ビュオッ
吏将の問いかけに答えるように翻った一つのマント。
「オレが行くべ」
中から出てきたのは陣と……未来。
「陣だ!」
「風使いの陣だぜ!」
有名な妖怪、陣の登場に会場はざわつく。
「未来!?」
浦飯チームの面々が注目したのは、陣より未来の方だ。
存在をなるべく消そうとマントが飛んでいった瞬間しゃがんだ彼女だが、幽助たちには丸見えである。
「み、みんな…」
未来が立ち上がり口を開こうとすると、飛影に右手首をつかまれた。
痛いぐらい、強く。
「どうして未来がここにいる?」
そう言った飛影の口調は静かだったが、確かな彼の怒りを感じ未来はびくっとする。
さらに強くなる飛影の力。
「っ…」
「飛影」
痛みに顔をしかめた未来と、蔵馬の一言にはっとした飛影は彼女から手を離した。
未来は一度息を吸うと、おそるおそる説明を始める。
「体調がよくなったから、みんなの試合の様子が気になって部屋から出て…。そしたらあの人たちと会って、闘技場まで送ってもらったの」
「未来、オレは部屋から出るなって言ったよな?」
幽助に射すくめられる未来。
蔵馬も飛影も桑原も何も言わなかったが、幽助と同じ気持ちでいることが表情でわかった。
(私…本当に馬鹿なことした)
武術会開催の2ヶ月前から、皆は未来の安全を一番に考えてくれていた。
それなのに、自分は…
「みんな、ごめんなさい。みんなは私の安全をすごく考えてくれていたのに、私はそれを裏切るようなことした…」
自分のいたらなさ、軽率さを未来は痛感する。
「みんなに対して失礼な行為だったと思う。ごめんなさい」
深く頭を下げた未来。
試合が気になるからといって、楽観的な考えで部屋を出た自分を未来は責める。
実際、魔性使いチームの面々に捕まり、送ってもらうのを断れない状況になってしまった。
「ったく、もう危なっかしいことぜってーすんなよ!オメーが無事でよかった」
下げたままの未来の頭を、幽助がくしゃくしゃっと撫でた。
それに驚き、未来が顔を上げる。
「未来ちゃん、オレらの試合状況を心配してくれたんだろうが、一人で行動なんてナシだぜ」
軽い口調の桑原だが、思いは切実だ。
「未来、絶対にこんなことはもうしないと約束してくれ」
「約束する」
真剣に言った蔵馬にこくこくっと頷く未来。
皆、呆れて彼女を守ることを放棄したくなってもおかしくないのに…
許してくれた皆に、未来の胸は熱くなる。
怒ったことは、それだけ未来が大事だということ。
叱るのだって、優しさだ。
飛影につかまれて赤くなった未来の手首も、彼の思いの強さの証だろう。
「あの〜お取り込み中すみませんが、対戦方法を決めてください」
小兎が大将である幽助に話しかける。
「あ、ワリイ、そうだったな」
幽助がリングに上がり陣と向き合った。