long dream@


□罠
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大きな黒マントに、陣と共にすっぽりおさまった未来。


真っ黒なマントであるにもかかわらず、内側からは外の様子がよく見えるようになっていた。


「なんでわざわざこのマントに入って移動するの?動きにくそうなのに」


マントの中で、未来が陣を見上げて尋ねる。


「これはただのマントじゃねーべ。オレの妖力がこめてあっからな」


「あなたの妖力?」


「オレはあなた、じゃなくて陣だべ」


聞き返した未来に、陣が訂正する。


「う、うん。陣、ね」


未来は戸惑いながらも頷いた。


「これから陣たちが戦うってことは、浦飯チームは連戦ってこと?」


「そうだべな」


(本部もまったくひどいことするよ。いつ試合するの?今でしょ!ってわけか)


林先生流に未来は浦飯チームが置かれた状況を理解した。


「よし、出発するぞ」


吏将の一言と同時に、5つの黒マントが空中に浮かぶ。


「え!?嘘!?」


驚きの声をあげる未来。


マントに包まれた未来の体も、そして陣の体も、地上1mほどのところで浮いていた。


途端、急上昇するマント。


「きゃああああ!」


未来を激しい浮遊感が襲い、思わず目の前にいる陣の腕を掴む。


上昇は空高くでストップし、一面の青空が広がる。


「びっくりしたあ…!あ、ごめんなさい…ってやっぱ無理!」


未来は陣から手を離そうとしたが、雲に近いこの場所でそれは不可能な話である。


「な?ただのマントじゃねーべ」


怖がる未来を見て、陣が面白そうに笑う。


「笑ってる場合じゃないよ!怖すぎて失神しそう…」


足が地面に着いていないことが、こんなにも心細いとは。


未来の顔は真っ青だ。


「なんでオメが怖がるか分かんねえだな。風が気持ちいいべ?」


不思議そうに陣が未来に言う。


「風なんて感じてる余裕がないよ…」


恐怖のせいで、だんだんと小さくなる語尾。


「行くぞ」


吏将の合図で、黒マントは空中から姿を消す。


体が回転しているような、奇妙な感覚に、未来は目をぎゅっと瞑った。




「未来、着いたっちゃ」


「ここは…」


陣の声に未来が目を開ければ、広がっていたのは観客席。


一昨日見覚えがある光景…そう、暗黒武術会の闘技場だ。


「なんでなんで!?瞬間移動したの!?」


「瞬間移動とは違うだよ。オレの妖力で風を操って、高速でここまで移動したんだべ」


「すごい!陣は風を操るんだ!」


未来がピョンピョン飛びはねんばかりに興奮して言った。


「魔性使いチーム、チーム名通りまるで魔法を使ったような入場です!」


1回戦と同じように、実況は小兎である。


「出やがったな。もったいつけやがって」


幽助が5つの黒マントを睨み付ける。


まさかそのマントの一つに未来が入っているとは思いもしていない。


(ゲッ 幽助たち、みんな…)


敵と共にマントの中にいるという、この状況。


幽助らにどう説明するか、未来は冷や汗をかくのだった。


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